陰鬱なニューヨークの曇り空は、夢のような恋がうつつの縁を危うくなぞりながら蛇行する束の間も、分厚く重い色の岩が蓋をしたかの様に、この思い出の中では決して晴れ間を見せてくれることはない。
雨の日、朝靄、部屋の中。
楽しいと一言で表すには余りにも独り善がりで、誰も僕たちの味方にはなってくれないような気がして、この胸の高鳴りが君があの日褒めてくれた旋律のように君の心に届いているのかどうか分からない。
僕のことを全部知って貰いたいけど、僕は余りに退屈すぎて、ほんの短い間君は僕を好きでいてくれたかも知れないけど、君が僕を知れば知るほど僕を表す言葉は褪せて、運命なんて保険に頼りたくなる。
忘れないで、と君は言ったけど、君のことを表す言葉は遠く離れた今でもどんどん増えて、もしこの先絶対に二人が会えないと分かっていても、それでもまだ忘れないで欲しいと思っていてくれるのかな。
