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君の名は 第三部のめるのレビュー・感想・評価

君の名は 第三部(1954年製作の映画)
3.2
眞知子と後宮の純愛物語、ついに完結!


最後の3分間のためにこの三部作は作られたと言っても過言ではない。

普通なら三部作の3作目はラストのふたりが結ばれる瞬間を目指して一気に駆け抜ける展開になっていくはず。
でも、この映画はあくまで視聴者にギリギリまで「ふたりは結ばれるのか?結ばれないのか?」とハラハラさせたいらしかった。

しかし、私の中ではディズニープリンセスと同じくらい結ばれることを確信していたために、スクリーンの中で泣いている人たちのやり取りが茶番に見えてこないと言えば嘘になる。
当時の観客は映画の中の登場人物と同じようにこのふたりが結ばれることを祈り続けていたのだろうか。
2時間泣き通しの岸恵子を見ているとこちらまでやつれてくるよ。

勝則に「男なら潔く身を引け!」と言ってやりたい。
絶対にその方が(映画のキャラクターとしては)かっこいいし、自分の気持ちも軽くなり相手も幸せになるに違いないのに、そうしない勝則は非常に人間臭いキャラクターだった。
最後は自分の気持ちに踏ん切りをつけ、愛していない人と結婚をしたりもせず、自分の意思を明確にさせていて良かった。
互いの幸せを願うことが夫婦であり愛じゃないかな?

眞知子の離婚話を利用して結婚しようと言ってきた男が一番嫌だった。
1作目の二の舞になるところを乗り越えたのは眞知子の成長?と言ってもいいのか。

勝則にお義母さんとの別居を結婚の第1条件だと言ってのける第2の嫁さん候補が登場。
自分の息子夫婦と一緒に住みたがるお義母さんに「そんなの可笑しゅうございますわ」と一喝。スカッとした。
勝則はこういう人と結ばれたほうが良かったと思う。お互いに言いたいことをハッキリ言うから喧嘩も多そうだけど、案外相性は良い気がする。

お義母さんが反省したかと思ったら新しい嫁さんが嫌いだから眞知子に戻ってきてほしいと頼んだところは、怒りや呆れを通り越して笑わずにはいられなかった。
どの口が言うとんねん(笑)
人の気持ちは変わっても性格までは変わらないことがよく分かるね。

ずっと頼もしく好感が持てた眞知子のおばさんが最後に株を下げる発言していてげんなり。
離婚届を出した勝則に「なんでもっと早くしなかったんだ」と言いたい気持ちは分かるけど、離婚を切り出された勝則の気持ちを第三者が責めるなんてみっともない。
眞知子もおばさんにそんな言葉を言ってほしくなかったよ。


ところで、眞知子の病気は何だったのかしら?気の病だよね?(恋患い???)

岸恵子の迫真の演技をお見事だと見ながらも、脚本と演出についてじっくりとあれこれ考えてしまった。
私なら後宮が帰国し走り息を切らして病室のドアを開けるという一連の流れに劇的な音楽を付けて演出したい。宮崎駿監督の『風立ちぬ』みたいな。
でも、これはあくまで生きるか死ぬかの狭間で時間との闘いという神妙かつ緊迫感溢れる演出だった。結末が分からないのならそれでいいんだろうけど助長に感じた。


当然主役ふたりが結ばれてハッピーエンドだが、ラストシーンは意外にも綾さんが出てくる。
この映画は果たしてハッピーエンドと呼べるのだろうか?
実はこのふたりに振り回され巻き込まれた人々の悲哀の映画だったのかもしれない。
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