ななし

昼下りの情事のななしのレビュー・感想・評価

昼下りの情事(1957年製作の映画)
4.0
前半は「ちょっと厳しいかなあ」と思っていたら、後半からぐっとおもしろくなり戸惑う。おそらく、若きアリアーヌ(オードリー・ヘプバーン)がどれだけ魅力的かつお金持ちであろうとふた回り以上も年上の男性を片思いすることが、どうしても納得できかったからに違いない。

いっぽうで彼女が恋するフラナガン(ゲイリー・クーパー)がいちどパリを離れて、一年後に当地に戻って以降──ふたりが再会する後半部は、一方的に「追いかける側」だったアリアーヌが一計を案じて逆に「追いかけられる側」になることで、心情的にも共感しやすく一気に物語に引き込まれる。

こちらが映画に乗ることで、必然的にコメディパートも一気にキレを増していく。お気に入りは、フラナガンが名前すら教えてくれないアリアーヌの正体を探るために、よりにもよって私立探偵である彼女の父親(モーリス・シュヴァリエ)に調査依頼をしてしまうシークエンス。調査対象がすぐそこにいるのにお互いいっこうに気づかないコント的なシチュエーションが大変に楽しい。

この追いかける側だった女性が、空白期間を経て追いかけられる側になるという”逆転”の構図は、本作とおなじビリー・ワイルダー監督✕オードリー・ヘプパーン主演の『麗しのサブリナ』にも観られる展開である。それゆえ、『サブリナ』鑑賞時にもフィルマークスに書いた欠点が当てはまる。すなわち、令和の時代に生きる我々からすると、オードリー・ヘプパーンは圧倒的な美貌に恵まれた伝説的な女優であり、そんな彼女が男性に――それも大きく年上の男性にまったく振り向いてもらえないというのは、根本的にしっくりこないのだ(『昼下りの情事』ではフラナガンは細身の女性が好みではないといういちおうの理由付けはされているが)。

それほどに、本作におけるオードリー・ヘプパーンはあまりに美しすぎる。
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