にじのすけ

ロスト・チルドレンのにじのすけのレビュー・感想・評価

ロスト・チルドレン(1995年製作の映画)
3.7
この極度に作りこまれた映画世界こそ、まさにジャン=ピエール・ジュネの真骨頂ですね。そのこだわりたるや「デリカテッセン」以上です。”神は細部に宿る”という言葉ほど彼の作品にふさわしい表現はないでしょうね。
登場人物が例によっていちいちとんでもなくクセがあるのも良いですし、ところどころで出てくるシーンもジュネならではのウィット(エスプリ?)に富んでいて素晴らしい。あのシャム双生児の姉妹が4本の手を上手く使って料理するシーンなんて最高です。他にもジャン=クロード・ドレフュス(「デリカ」の肉屋!)がノミを操るシーンなんて突然ミクロの精巧な特撮になったかと思いきや、仕上げは手回しオルゴールだなんて、フランス映画、それもジュネしかできないぶっ飛んだ発想でしょう。
そういった数々のディテールに満ちた舞台設定を横糸に、大人びた魅力を持つ子供窃盗団のミエットと純粋な心を持つ大男ワンが肉親のような愛情で結ばれ、協力し合って弟を救い出す、という縦糸が絡み合い、他に類を見ない作品となりました。後年「アメリ」という傑作を生み出す要素は全て出尽くしています。
彼のルーツを知りたい方には最適な一本かもしれませんね。
にじのすけ

にじのすけ