Eyesworth

アタメのEyesworthのレビュー・感想・評価

アタメ(1989年製作の映画)
4.7
【誘拐から始まる恋】

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督×アントニオ・バンデラス主演による初期の異色ロマンス作品。

〈あらすじ〉
精神病院に入退院を繰り返す青年リッキー(アントニオ・バンデラス)は、まともな生活を送るために結婚を決意する。彼はその相手として以前から憧れていたポルノ女優マリーナを選び、一方的に求愛するが、当然彼女には相手にされない。そしてとうとうマリーナの家に押し入った彼は、怒り出した彼女を監禁し、ベッドに縛り付けてしまう…。

〈所感〉
監禁から始まる激ヤバラブストーリー。相手がポルノ女優だからって良いわけないが、マリーナもヤク中で欠落した性格でもあるので、その心の隙を誘拐犯のリッキーが上手く突いた印象。最初から平気で楽屋に侵入して物をを盗んだり、全く関係性の無いマリーナの家に押し込んだりするとんでもない男なのだが、最後まで見てると、マリーナ同様にこの男に対してふつふつと愛着が湧いてくる。これが母性本能…?マリーナの姉とも馴染んで最後良好な関係に落ち着いているのが面白すぎる。ストックホルム症候群は主に人質が犯人に対して愛着が湧く現象だが、この作品の二人の関係は加害者の男から被害者の女への一方的な矢印が、同情から双方的な愛に変わってくるものである。不可解すぎる、とも言いきれない恋愛の妙が詰まっていてとても面白かった。何より、スペイン映画らしくカラフルで楽しいセットだ。
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