あくとる

グラン・ブルー完全版 -デジタル・レストア・バージョン-のあくとるのレビュー・感想・評価

2.5
最近リュック・ベッソンの有名作『レオン』『フィフス・エレメント』を観て全然合わなかったのだが、本作は比較的良かった。
というのも本作には大きな魅力が明確にあるからだ。
それは神秘的な自然の美しさ。
人間ドラマにNHKで流れそうな環境映像やドキュメンタリーを添えた、というと褒めてるのか貶してるのか分からないが、アイキャンディとしての良さがある。
正直恋愛ドラマパートはどうでいいからもっと自然を見せて欲しかった。
また、監督の他の作品にいるような観ていてイライラするキャラクターがいないのでストレスはあまりない。

ただ、それは素材が良いという話であって、必ずしも料理人の腕が良いということにはならない。
もちろん撮影は技術だが特に凝っているとは感じず。
脚本に関しては、前述の二作がジャンルの型から逸脱せず退屈だったのとは違い、潜水士のドラマという独自性はあったが、長い割にキャラクターの造形に深みがない。
中盤頃に結局恋愛かとガッカリし、そのうえ後半以降は自然の映像が減り、興味を持てない人間ドラマにフォーカスを合わせるのでとても退屈。
監督デビュー作でいい役者を使えなかったのかもしれないが、端役の演技はいまいち。

なので、やはり自分の中でリュック・ベッソンは雰囲気映画作家の印象は否めないのだが、少なくともヴィジュアルに関しては一定のクオリティがあると感じた。
自分は監督リュック・ベッソンが苦手というより、彼の脚本が苦手なのかもしれない。

余談。
これはしょうがないことかもしれないが、他の作品も観て思ったのが、リュック・ベッソン監督作は価値観やヴィジュアルが今観ると古臭くて、良くも悪くもその時代を反映していると感じた。
今見ても響くような普遍性に欠ける。