akira

蝉しぐれのakiraのレビュー・感想・評価

蝉しぐれ(2005年製作の映画)
2.5
まあそりゃそうなるわな、、
単なるダイジェスト(しかもわかりにくい)という感じで、面白くなかった。

自分なりに感じた原作小説のよいところは、藤沢周平の詩情あふれる美文と、お福様への思い・磨き上げた秘伝の剣術・親父の敵への復讐など、それまでに積み上げてきた全てがクライマックスの一夜に結実していく構成の妙にあったと思う。

この映画にはそのどっちもなくて、ただ原作のゆったりとしたテンポ感だけを踏襲しながら、主だった出来事を並べている感じだった。
友だちの描写とか、あんなちゃらんぽらんならいっそ全部カットすればよかったのに。

と、欠点ばかり書いたが、良いところもあった。

・緒形拳演じる父親
文四郎との寺での会話の場面、シンプルに親父かっこよかった。

・文四郎と逸平がはじめて人を斬ることに怯える描写
原作は一種のさむらいファンタジー(理想化されたハードボイルドなさむらい像)なので、人斬りに対するためらいや恐怖心が全く描かれない。映画では対照的に、ちゃんと「とうとうやってしまった」という情けない半泣き顔を見せるので、あの場面の生々しさが増していたと思う。

・最後の文四郎とお福様の会話
互いに多くは口にはせずとも、ほんの一瞬だけ、何も背負っていなかった頃のふたりに戻ったのが伝わってきてじんわりきた。

•DVDのメニュー画面
坂道を登っていく子供頃のふくの姿が、本編鑑賞後だとよりエモい。サントラもマッチしていて、よいメニュー画面だと思った。
akira

akira