kuu

グレイス・オブ・マイ・ハートのkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『グレイス・オブ・マイ・ハート』
原題Grace of My Heart.
製作年1996年。上映時間116分。

音楽担当はラリー・クライン。
監督は『ガス・フード・ロジング』アリンアンダース。
製作総指揮はマーティン・スコセッシ。

シンガー・ソングライター、キャロル・キングの半生をモデルに(かなりの脚色があり伝記映画じゃない)、実在の音楽関係者を思わせる登場人物と当時のヒットナンバーを彷彿とさせる挿入曲の数々を散りばめ、当時のポップミュージック・シーンの変遷をスケッチしている。

50年代後半から70年代前半までの激動のポップミュージック界に身を投じた、一人の女性の生き方を描いた米国ミュージック映画。

エドナは歌手を目指して、ニューヨークへとやって来た。
だが50年代末のアメリカは男性グループが主流。彼女はデニースと名を変えて、ソングライターとしてやって行くことに。やがて作曲家のハワードとコンビを組んだエドナは、彼と恋に落ちて結婚したが。。。

歌コンで優勝したデニース(イレーナ・ダグラス。強烈な容姿と不思議なユーモアが魅力)は、ニューヨークの音楽出版社に雇われるが、歌手と作曲の両方を手がけたいという彼女にマネー ジャーは、『どちらかひとつを選ぶように』って云う。
そこで、仕方無しに作曲家になる道を選ぶ。
女子の自作自演シンガーソングライターを受け入れるほど、60年代初頭の米国は女性の地位が高くなかったし甘くはなかった。
実際、この映画のモデル(相当に脚色が加えられており、事実と異なる部分もある)になったキャロル・キングが『Tapestry-つづれおり』でシンガー・ソングライターとして人気を博したんは1971年。
同じシンガー・ソングライターのジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロも最初は歌手という以上にソングライターとして認められた。
ミッチェルらが目立ち始めた60年に、米国の『ニューズウィーク』誌は特集を組んで、
『彼女たちは歌え、しかも作曲もできる』と騒ぎたてた。
今作品が描くんは、そないな時代に生きる女子の精神的葛藤。
ヒロインに恋する3人の野郎どもは一様に線が細い。
妻との才能のかけひきに耐えられなくなる最初の夫 (エリック・ストルツ。キングの夫だったジェリー・ ゴーフィンがモデルだとか)、 
家庭のあるジャーナリストの恋人(「いちご白書」のブルース・デイヴィソン)、
秀才ゆえノイローゼになる2番目の夫 (マット・デイロン。 ビーチ・ボーイズのメンバーがモデルか)。
愛につまずくたびにマネージャー(ジョン・タトゥー ロフィル・スペクターやルー・アドラーがモデル?)は、彼女を励ます。
そんな信頼関係が『グレイス・オブ・ マイ・ハート』ちゅうアルバムとなって世に生まれる。
恋愛じゃなく、創造を通じて結ばれた男と女が現代的かな。
物語が多少雑なとこもあるけど、テーマのオモろさと、曲の楽しさで観せてくれた。
地味ながらも俳優陣は充実してるし。ニューヨークに実在したブリル・ビルのエピソードとかも、個人的には興味深かった。
コステロとバカラック共作の胸を打つテーマ曲『ゴッド・ギヴ・ミー・ストレンクス』はイカしてる。
苦悩に 打ちのめされそうになったデニースが自分を励ますかのようにこの曲を歌う場面は感動的でした。
他にもショーン・ コルヴィンとか、豪華メンバーによる強力サントラ盤。 キャロル・キングの前夫ジェリー・ゴーフィンやジョ ニ・ミッチェル等も曲を提供。
コステロ&バカラックはこの映画の後、98年に共作アルバム『ペインテッド・フロム・メモリー』 を発表してる。
歌心あふれる映画にふさわしい後日談かな。
kuu

kuu