きまぐれ熊

ムーランのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

ムーラン(1998年製作の映画)
3.0
実写の予習に。

アニメーションは今でも余裕で通用するどころか蹴散らせるレベルのクオリティ
花火の色彩えぐいぜ
その分、他の要素の古臭さが際立ってるな

特に目立って見えたのがテーマと音響
劇伴がなんちゃって中華なので流石に楽器の音色が古臭い
その上、これは仕方ないんだけど英語で歌いだすので虚構感が強くて吹き替えにしてしまった

テーマが女性の解放?とか自立?なのかな
この切り口を98年に着手した点は新しかったんだろうけれど、家父長制に対する反抗くらいの議題にしかなってない
そしてその反抗を貫き通す事なく既存の価値観に収まっちゃってる
ファ家の守り神というチート要素と、軍隊という個人が無双するには不向きな集団社会との噛み合わせも致命的に悪い

加えて、父上の名誉を守るとか、良家に嫁ぐ(当時の)一般的女しての道がうまくいかない事だとか、ごちゃっとした前振りのせいで訳わかんない感じになってる
事実、ムーランも自分で訳分かってないし

ムーランの明晰な頭脳だったり、ムーシューというチートを使ってとにかく成り上がってやるぜ!
って言うエンタメ路線だったらいっそ楽しみやすいのに、そうでもないんだよな

訓練シーンでは柱を登りきることで周囲に認められる訳だけど、筋肉でしか承認されない事を認めちゃっていいんか

何より最終的に将軍といい感じになるのも既存の価値観の枠を出れてない
反抗はするけど落ち着いたら既定路線で幸せになりま〜すみたいな中途半端さ

軍隊なのにルールを守らず特攻するシーンもアホちゃうかって思っちゃうし、
女としての武器を生かすんだか、男性社会で活躍したいんだか、ツッコミどころだらけ
あとフン族をあからさまに化け物として描写してるのが痛い
被差別者が、別人種という弱者を無意識に差別してるっていう構図が意図せず提示される
今見ても楽しく見れない人多いんじゃない?

時代を踏まえて考えると、既存の価値観に問題提起する事自体に価値を見出された作品なのかな
普遍性はないけど、ディズニーで新しい価値観を提案しようとした点で評価されたんだろうか
それが後のズートピアとか実写アラジンなんかに繋がってくのかと思うと無碍には出来ないけど、
まあ...単体としては今見るべきものはもうなくなった作品かなというのが正直な感想
最近のが良すぎるせいでそう見えたってのもあるのかな

で、これが20年を経て時代が変わった実写版にはどうアップデートされてるのか
楽しみっす
きまぐれ熊

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