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モンスターのytのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
3.7
パティ・ジェンキンスが監督・脚本を務め、実在した連続殺人犯の元娼婦、アイリーン・ウォーノスの生涯を描いた人間ドラマ。主演であるシャーリーズ・セロンの役作りは他に真似できるものではなく、見事第76回アカデミー賞主演女優賞等様々な賞を受賞。何を善悪として判断し、どう結果を帰結すれば良いのか分からなくなる、恐ろしい人間ドラマ。

[レビュー]
・誰も救われない、善悪を計るのが難しい、気分が落ちる人間ドラマ。正直、レビューするのが難しい。一見、アイリーンの行動や言動に気を取られ、サイコパスと感じる人も多くいるだろう。若くして娼婦としてお金を稼ぎ、常に酒や煙草を嗜み続け、救いの手を差し伸べてくれる少女に対して、最悪の結果で迎え入れる。正直普通に作品を観たら、連続殺人犯の狂気的な生涯を描いただけだと感じる。

しかし、そんな世の中である、いやあった?というのも事実である。小さい頃から何にでもなれると夢を見て、必死に努力をして生きてきたが、自分の求める幸せにありつけない。セルビーと出会い幸せを求めるため、行動に移すも、相手にして貰えない。この状況で、残されていた手段は1つしかない……なんてやるせない。

もちろん、娼婦という肩書きを持ちながら、連続殺人を行ったことは残酷極まりない。アイリーンに対して同情する訳でもない。しかし、アイリーン、相手の男性、セルビー、どれも社会的に何か不満を抱え、生きている人達。アイリーンが1番悪なのは分かる。だが、本当は何が問題だったのか?分からなくなってくるね。

・同性愛者についての見方も、現在とは違ってだいぶ酷く尖っている。人それぞれ色んな価値観や生き方があって、何かを抱えて生きている人が多い。本作は、そんな同性愛についても深く考えさせられる作品になっている。

・シャーリーズ・セロンの演技、マジで上手かった。細くて綺麗なあのセロンが、ここまで変貌するとは凄い。役作りに命を懸けているのが伝わってくる。クリスティーナ・リッチも、可愛くてよかった。煙草を吸うセルビーが好き。作品自体の雰囲気も、なんだろうファーゴ?的な匂いを感じるというか。1990年代後半から2000年初頭の映画って何か良いよね。

👉観た後は気分が重くなる作品だけど、かなり好きな作品。シャーリーズ・セロン史上、1番といっても良い怪演を是非観てほしい。同時期に、イギリス制作の「シリアル・キラー アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女」という作品が公開されている。こちらも観てみたい。
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