butasu

ストロベリーショートケイクスのbutasuのレビュー・感想・評価

3.0
佳作。4人の女性を描いた地味な映画だが、悪くない。4人というか2人と2人を描いており彼ら同士はほぼ交わらないのだが、ラスト、交流が生まれそうな瞬間に映画が幕を閉じるのも素晴らしい。

中村優子の演じた、一途に学生時代の男に片想いを続けるデリヘル嬢・秋代が特にグッと来た。「菊池」と名字で呼び捨てにし、彼に会うときだけ眼鏡をかけダサいTシャツとジーパンを身につける。スーパーで野菜を買い込み、「田舎から届いたからもらって」と口実を作る。彼女がいることを知って勢いで一夜を共にするが、翌朝「ゴメン」と言われてしまうし、もう会えないし、「菊池が触った私に誰も触るな」と仕事ができなくなってしまう。一つ一つのエピソードがとても切ない。菊池を短髪の安藤政信に演じさせているのもズルく、そりゃ好きになっちゃうよ、という説得力が半端ない。

イラストレーターの塔子の話もなかなか。他の三人は恋愛が主軸なのだが、彼女だけ"創作"がメイン。渾身の一作を会社の若い女に「悪くないですね」と言われた上に紛失されて描き直せと言われる一連のくだりは、塔子と一緒に見ているこっちもワナワナした。「謝って」と低い声で繰り返す彼女に、感情移入が止まらなかった。ただ過食症の彼女の嘔吐シーンがとにかく多くて長い上に音もリアルなので、それは結構キツかったかな。

配役は見た目は完璧だったが、難しい役の順に
岩瀬塔子>中村優子>中越典子>池脇千鶴
なのに、演技力が
池脇千鶴>中越典子>中村優子>岩瀬塔子
だったのが結構キツかった。後から、岩瀬塔子という名前で出ている人は漫画の原作者だと知って驚いた。一番繊細な演技が要求される難しい役なのに演技経験のない自分が出しゃばってくるって、とんだナルシストだな。

冒頭の、池脇千鶴によるモノローグが本当に大好き。
「惨めだった。人生最悪に惨めだった。死んでやろうと思った。だけど思ったんだよね。そんな最悪な出来事を乗り越えられた私って、強いって。生き返った私には、何だってできるような気がしたんだよ。」
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