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ブエノスアイレスの夜のERIのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレスの夜(2001年製作の映画)
2.5
ガエルの作品『ブエノスアイレスの夜 』を見ました。ガエルの作品て、エロスから切り離されへんのか?てぐらい、今回は言葉の官能作品でした。ガエル出演じゃなかったらこれ見てないなぁ、私。

監督さんは、この映画の中で人間のもろさを描きたかったらしい。アルゼンチンて1976年ごろ、実際にクーデターとかがあって、そういう歴史背景に強い関心とかがある人は、また違ったように見えるんやろうか。

この監督さんは、主演のカルロス役を演じたセシリア・ロスの旦那らしい。そういう意味でもちょっぴり複雑(笑)

さてさて。本作の物語はというと。カルメンていう、ちょっとクールな女性がいて。彼女はあるトラウマのせいで、故郷のブエノスアイレスで住めなくなってしまってる。父親が体を壊したことをきっかけに、ブエノスアイレスの数日間だけ帰ってくることになるん。そんな中で妹や、父親の担当医、母親、父親など、それぞれが20年前のトラウマについて、再び考えさせられる。

そんなすれ違いの家庭の日々を過ごす一方。ずっと孤独でしか生きてこられなかったセシリアは、ある男の子の声に惹かれていく。セシリアはそのトラウマのせいで、男の人に触れられることさえできなくなってしまってるから、その声の持ち主にお金でいろいろな要求を出して、官能小説を読ませたりして、そのことでカルメンは快楽を満たされるようになっていく。既に歪んだ形でしか、相手を求められなくなってる人間のもろさが描かれている。ちょっと怖いぐらい。

そんなカルメンの歪んだ性欲に、その声の持ち主グスダボはなんだか気になって、彼女の顔が見たくなる。言葉じゃ説明できないような二人の関係は、どんどん深みにはまっていって。この二人の関係も、二人を取り巻く周囲の人たちも、すべてが悲しい結末の方向へ走りだしてゆく。軍事的背景から生まれる人間の悲しさやったり、もろさやったりを描く作品。

なんだか影がたくみに使われているような、ずっしりとした映画です。

そんな中ガエルは相変わらず可愛い。さすがちびっこいころから演劇を学んできただけあって、芝居の力があるところが好きです。存在感はしっかりあるし。主役のカルメンを演じたセシリアの魅力が、この映画ではいまいち発揮されてなかったような気がするので。ガエルばっかり見てしまいました。

そのトラウマの理由もすべて悲しくて。なんとも塞がれた気持ちになってしまいました。
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