鈍感な可愛い女の子という香川京子の十八番の演技も見れるし、
何より杉葉子が素晴らしい。
同時代のスターと並ぶと二番手、三番手になる女優としての実存とも重なり、
唯一結婚できない女性を見事に演じている。
父権をなぞるように、朝食の前に新聞を読み、社会に憤る杉葉子。
演出としては微塵も感じさせないけど、細川俊夫に対する届かぬ恋を想像してしまって、泣ける。
三好英子が演じるおふく婆さんという、独り身で半分気のふれた年寄りが、杉葉子の未来にも思え、
それを香川京子と杉葉子が二人で笑うのだけど、杉葉子の内面を想像すると苦しくなる。
誰からも気づかれない恋と孤独。
すごい作品だと思う。
女性映画の最高峰と言っても良い。
残念なのは、少しだけ入れられる5人娘の子供時代の回想。
現在から伺える関係性が魅力的だっただけに蛇足だし、リズムが崩されたな。
これがなかったら、もっと最高だった。