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黒い蠍のMOCOのレビュー・感想・評価

黒い蠍(1957年製作の映画)
2.5
「これは遥か昔に絶滅したはずの蠍だぞ」


 特撮のストップモーション・アニメーションと言えばレイ・ハリーハウゼンの1966年の『恐竜100万年』や『シンドバットシリーズ』を連想する世代なのですが、レイ・ハリーハウゼンが映画の特撮に興味を抱いたきっかけがウィリス・オブライエンが参加した1933年の『キングコング』との出会でした。
 そのウィリス・オブライエンが特撮を担当した1957年のアメリカのモンスター映画が『黒い蠍』です。
 1954年の日本の『ゴジラ』と比較すると、ストップモーション・アニメーションに力を入れたアメリカと着ぐるみに力を入れた日本の特撮の考え方の違いがわかります。スケール・ストーリーは当然『キングコング』を凌ぐものではなく、蠍の顔のドアップは何度も使い回され、大群の蠍の行列も使い回しです。所々全く立体感のない絵の蠍も出て来ます、しかしストップモーション・アニメーションでカクカクと動く蠍はそれなりに趣があり超巨大の蠍と蠍の闘いなどは見所です。

 ストーリーは単純、メキシコで起きた地震で地表に穴が空き穴から出て来た巨大蠍が村人を食べしまう行方不明事件が起き、偶然地震の調査に訪れた地質学者の二人がクレーンで地下に降りると巨大蠍が大量に存在しており、穴の側の山を爆破して穴を塞ぐのですが別のところにも出入り口になる穴があり、再び人間を襲いはじめ、主人公?の二人が怪獣退治の専門家でもないのに再び呼び出されて巨大蠍を退治するのですが、何故かその時には大群の蠍を巨大蠍が殺しまくっていて巨大蠍一匹VS軍隊になっていて、最後に巨大蠍を葬るのは主人公の地質学者で「めでたしめでたし」という話です。

 主人公の恋愛、さらに大人の役に立ちたいと知らぬ間に地底行きのゴンドラに隠れて乗り込み蠍に追われそうになる少年、蠍の大群に襲われ脱線する列車、弱点が一ヵ所しかないことがわかる蠍、スタジアムでの闘い・・・とパニック映画に欠かせない要素てんこ盛りの「欲張り定食」みたいな映画です。
 ただし、映画のくせして1966年のテレビ放送モノクロ『ウルトラQ』並みの出来上がりです。

 アメリカのモノクロ時代のストップモーション・アニメーションを観るには「キングコング」で十分かもしれないのですが・・・まぁこれもありかな?
 古の映画は本当に良い。
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