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ザ・テロリスト 少女戦士マッリのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【タミル・タイガーの少女】

1991年のR・ガンディー暗殺事件を基にしたという、テロ少女マッリの物語。密林に潜む組織の中だけで、イデオロギー工作をされ育った19歳の少女が、ある残酷な任務で初めて外界に出て人々に触れ、自身の変化に揺れうごく。

撮影出身サントーシュ・シヴァン監督が低予算、主演女優以外はアマチュア、という体制で、短期間オールロケで撮り上げたそうですが、正攻法で繊細、なかなか見応えありました。映像がとことんシャープで惹きつけられます。

劇中では不明ですが、ガンディー事件が基ならこの組織はLTTEでしょうね。制作時の1998年はまだ紛争中だったから、その辺は暈したのでしょうか。結末をみれば、ウチの戦士と違う!とクレームつきそうだしなあ(苦笑)。

組織として具体的でないから、イデオロギー工作の内容も曖昧なんですね。そこが終盤で弱みになったと感じました。マッリの物凄い葛藤が現れますが、これだと一般人に近いかと。観客にはわかり易く、共感し易いのでしょうが、テロ組織の選抜メンバーとしては、これは甘いんじゃないかと思いました。

映像はアップが多用され、戦闘シーンも引きの画がなく閉塞感がありますが、マッリの近視眼的な世界の映り方に、うまく嵌ったと思います。

が、この距離感からだと、もう少しマッリの内側に踏み込んで欲しかった。いかにも私悩んでます、という外面の繰り返しが続いて、少々退屈しました。マッリちゃんて、もの思うと、すぐ水浴びたがるしなあ…(笑)。

しかし、彼女のお臍で、アップの最大効果が発揮されます!パンツのゴム痕?を残した、褐色のぷるる感にでれ~としていたら、あああ、そんな太くて黒いの、締め付けないでよぉぉぉぉ…(号泣)。

彼女の、母との繋がりを示すお臍の内に隠れたもの、外を暴力的に覆うもの。ここ、トリプルミーニング位で残酷が込められ、み続けるのが辛くなります。私にとっては、このメタファーが本作の沸点でした。おそろしい…。

そんなこんなで、弱いな、と感じたところもあるのですが、主演アイーシャー・ダルカールの、強さと脆さを素直に醸す存在感(濃い顔!)、彼女をかこむ嫌みのない助演陣、シズルあふれる自然描写(水に顔がある!)、などが集まり、全体では鋭利で、見応えある世界にまとまっていると思います。

<2012.7.23記>
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