予備知識ナシで観たもんだから(ほんと21世紀以降の邦画知らなさすぎw)、とある事件を題材に選んでいたことを本編途中で知り普通に驚いた。
この展開が小説と同じなのかどうか未読なので知る由もないのだけれど、映画としてはここしかないくらい絶妙のタイミングで種明かしがされている。後に起きてしまうその事実を知るそれ以前とそれ以降で当然観客が登場人物を観る目が変わるわけで、その直後からあらためてふたりが愛を育んでいく過程を丁寧に描きだしていくのがものすごくずるくてたまらなく切ない。
主役の高良くんの凡庸さを、池松、綾野、柄本、伊藤歩といった強烈な個性を並べることで引き立てており、逆説的に「特別なことは何もない」ことが、いかに非凡で素晴らしく、そして何より美しいということを描いた傑作だと思う。
なにしろ自分のようなひねくれ者には世之介の「普通に生きる」術が羨ましくて仕方がなかった。
人間のドロドロした部分を塗りつぶして、ほら、普通って美しいですよと取り繕ったような映画よりも、普通なことは普通に、おかしなことはおかしなままさらけ出して人間を浮かび上がらせるこんな映画のほうが断然好みなのだった(・・・むーん、昨日の是枝監督のレビューを引きずってますねコレ汗)