垂直落下式サミング

問題のない私たちの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

問題のない私たち(2004年製作の映画)
4.1
女子中学校でのいじめの連鎖を描く学園もの。クラスのリーダーの黒川芽以がいじめっ子で、冒頭から気に入らない子をみんなで取り囲んでプールに落としたりしている超悪い奴。だが、そこに転校生の沢尻エリカがやってきて、こいつがさらに超悪い奴なので、黒川は彼女にクラスの中心の座を奪われ失脚し、今度は自分がクラスのみんなからいじめられるようになってしまう。
学校のいじめを題材にした作品だが、非常に上質なバイオレンス百合だった。いじめシーンの描写には、こんな酷いことがあるのかと見ていて辛くなる部分もあるが、これは「エリ×めい」であり「みな×めい」でもあるということはゆずれない。めいめい総受けキタコレ!
ところで女の子が複数人の女の子に取り囲まれて押さえつけられる様子って、何でこんなにムズムズするんですかね。黒川芽以の「洗ってあげたら?」に怯えながら後退りする美波の演技は危機を察知した小動物的で、羽交い締めにされて担ぎ上げられた時の甲高い悲鳴にゾクゾクさせられる。
一方、ぼんやりしているから標的にされていた美波とは違い、急にいじめられる立場になってしまった黒川は、一度屈すれば終わりと幾度となくいじめられても涙を湛えた瞳で気丈に同級生たちを睨みかえすのだが、これがさらに苛烈ないじめに繋がっていってしまう。
そこで彼女をサディスティックに見下す視線の中心に君臨する沢尻エリカの風格が異様だ。沢尻エリカは超然的な役がハマる。明らかにこの少女がクラスの中心人物だと一瞥しただけでわかる覇気を発する彼女は、齢十と余年にして女王の資質を既に身に付けているのである!
その才覚をもって覇道を極めんと、いつ何時であっても他者にへりくだらず、積極的に加害者たらんとし、このコミュニティの覇者であろうとするその心意気に、この私めマジで感服の至りで御座います。エリカお嬢、一生ついていきます!
人間が集団になることで生じる軋轢によって皆の意識が悪い方向に共有されてしまうと、特定の誰かを排除しようとするレイシズムが発生し、また誰でもその標的になり得るし、その集団心理の元においては暴力を振るうことを肯定してしまうんだというのが、よくあるオーソドックスなイジメやめよう話の定型だとは思う。
その教育的な要素はエリカ様のおかげで極端に薄まり、単にクラスに以前より強大で超越的なバイオレンスが到来し、支配者の首が挿げ替えられただけかのようにも見えてきた。お嬢のドSっぷりがスゴすぎるせいで、いじめ防止啓発映画と言うよりエンターテイメント方向にぐっと寄っている。
その部分は底が浅いとも感じるが、子供のいじめに深みなんてものはないだろう。10年そこらしか生きてない中学生の「なんかコイツ気に入らない」っていう感情に理由なんかあるわけない。見てくれが良くて声がデカい奴は人気者になって、気が弱くて優しい奴は舐められるっていう事実があるだけで、そんなの動物の世界だって同じことだ。