MayuShimada

ガス燈のMayuShimadaのレビュー・感想・評価

ガス燈(1944年製作の映画)
4.0
久々に、シンプルにお話の内容がおもしろいと思いながら見た作品でした。

白黒映画だし、今の映画みたいにかっこいいエフェクトがかけられてるわけでも、スタイリッシュなアクションシーンがあるわけでもない。凝ったカメラワークや編集がされているわけでもないが、それでも食い入るように最後まで見たのは本当に久しぶりな気がする。

主演のイングリッド・バーグマンは私の父が一番好きだった女優さんでして、この映画を見ようと思った理由の1つでもあります。
なんで好きだったのかわかる。すごく綺麗な人だけど魅力はそれだけじゃない。どんどん不安定になっていく主人公の内面を表情とか声色で見事に演じていた。実はけっこう映画を見る人だったのはなんとなく知っていたけど、映画の話はあまりしなかった。父が生きているうちにこの映画を見てたら話が盛り上がっただろうになぁと少し後悔しました。

ミステリー作品ではあるが、謎解きを楽しむというより登場人物同士の心理戦的なものを楽しむ映画でしたね。心理戦といっても攻防があるわけではなくて、例えると、気づかないうちに侵入した敵陣のスパイに内部から切り崩されていくような感じなんですけど。
観客にはかなり序盤で一番悪い奴が誰か知らされるので、なんとかしてくれそうなキャラクターがなんとかしてくれることをずっと祈りながら、主人公がボロボロになっていくのを眺めるわけですよ。
とはいえ派手な演出もなくひたすら陰湿に物語が進んでいくので、手に汗は握らない、でも固唾をのんで見守る。はやく誰か真実に気付いてくれ!と思いながら。
たぶんこの映画、「私は本当のことを知っているのに、なにも手出しができない!」っていう無力感が味わえるのもミソな気がする。

伏線の張り方も私好みだったなぁ。
ちゃんと張ってちゃんと回収するの。ヒントを隠すときはなんでもない景観の中に隠すのが良い。観客が必ず見るのに、気に掛けないところに。逆に、明らかな証拠になりそうなアイテムを逆手に取った展開があると、ほどよい裏切られ感があって楽しい。
成り行きを見守るしかないのにこれだけ揺さぶられたら、そりゃ食い入るように見ますよね。

本当におもしろかったなぁ。
みんなにおすすめしたい。古い映画でも色褪せないおもしろさがある(画面は無彩色だけど 笑)。
MayuShimada

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