アニマル泉

寵姫ズムルンのアニマル泉のレビュー・感想・評価

寵姫ズムルン(1920年製作の映画)
4.5
マックス・ラインハルトの舞台「ズムルン」をルビッチがせむし男を、ポーラ・ネグリが舞姫を、それぞれの当り役を演じて映画化した。6幕構成。ルビッチとネグリが素晴らしい。死体となったルビッチとネグリの場面は圧巻だ。満席の客と老族長パウル・ヴェーゲナーの前で踊るネグリも圧巻。舞台はバクダッド。宦官やハーレムがルビッチらしい。二つの木箱に死体と潜入者が入り込んで、入れ替わり、事態が混乱していくのは十八番のルビッチタッチだ。死体と誰も気づかずにぞんざいに扱われて流転していくのがなんともシュールである。ルビッチは冒頭から何回も転がさられる。ルビッチといえば「扉」。老族長が「幕」を開けるとズムルン役のイェニ・ハッセルクヴィストと織物商人ハリー・リートケが逢引きしているのを発見してから暗殺場面までが見事だ。「扉」と同じ「幕」の効果である。そしてラストは宮殿の扉が解放される。
本作では並行モンタージュが多い。別場所の2組をカットバックで描く手法だ。ネグリが王子カール・クレーヴィングに追われて走るのと、金目の物と間違えられて運ばれるルビッチの死体を追いかける老婆マルガレーテ・グップアーがカットバックで見事に描かれる。本作では階段も印象的。織物商人の倉庫が地下にあるのが面白い。やたら落ちたり、宙吊りになる作品である。群衆の膨大な数に唖然となる。偉大なるドイツ映画の黄金時代の威力をまざまざと感じる。
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