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セルロイド・クローゼットのkuuのレビュー・感想・評価

セルロイド・クローゼット(1995年製作の映画)
3.5
『セルロイド・クローゼット』
原題The Celluloid Closet.
製作年1995年。上映時間104分。

ハリウッド映画の歴史の中で、60年代まで検閲上その描写が禁止されながらも様々なコードにより暗示的に描かれてきた同性愛。
映画における同性愛の暗示のされ方、描かれ方の歴史を、120本におよぶ作品からの断片と、俳優や脚本家、当時の観客だった同性愛者たちのインタヴューで明るみに出すドキュメンタリー。

1934から68年までハリウッドの映画製作を規制したヘイズ・コードの廃止は、アメリカン・ニュー シネマに代表される映画史的な革命をもたらしたそうっす。
せや、こうした規制の有無にもかかわらず、依然として偏見の対象となり、抑圧されるマイノリティが、映画の世界にも現実にも確実に存在してる。
映画研究者でゲイ・アクティビストの一人ヴィトロッソは、81年に発表した著書
『セルロイド・クローゼット』で、500本近い映画から同性愛をメタファーで表現したとおぼしきシーンを抽出して、映画史において同性愛者がどないに扱われてきたんかを検証した。
本作品は、それらの映像の引用に加えて、進行役を務める実際に同性愛者であることをカミングアウトしている女優のリリー・トムリンほか、シャーリー・マクレーン(彼女は、スピリチュアルな世界に深く傾倒してて、1983年に出版され、世界的ベストセラーとなった『アウト・オン・ア・リム』とか、精神世界に関する著書が数多くある。『ホモセクシュアリティとトランスジェンダーの問題は、前世に異性であったことと深いつながりがある。前世で、今の性とは違う異性だったかもしれない可能性について、真剣に考えてみることを我々は好まない』など、輪廻転生説を強く信じるマクレーンのさまざまな自説が説いてる)。
映画『フィラデルフィア』で同性愛者を演じたトム・ハンクスら同性愛を扱う映画にかかわった俳優・監督・脚本家にインタビューを敢行したドキュメンタリーです。
sissy-シシー(名詞:女々しい男)って呼ばれる米国映画で最初のゲイのキャラが登場したのは30年代初頭だそうです。
それ以来、少しずつ形を変えながら、笑いを誘う滑稽な存在として、あるいは異常で近寄り難い存在として、同性愛者のステレオタイプを形成してく。
そのイメージてのは、現実社会においても同性愛者を社会的弱者として位置づけさせ、80年代に顕在化したエイズ問題が事態に拍車を掛けたんやと思う。
本作品の証言者の一人、映画評論家のリチャード・ダイヤーの言葉がその状況を端的に云い当てている。
『スクリーンのなかの同性愛者たちは皆、クローゼットの中にいると云える。
それは現実も同じだ。
彼らと同じように、私たちも遠回しにしか自分を表現することができない。映画もクローゼットのなか、私たちもまたクローゼットの中だ。』
同性愛者を社会の片隅に押し込めようとする外部の視線と、自らそこへ逃げ込もうとする同性愛者自身の視線がつくりだしたクローゼット。
その扉はいまどこまで開いているんやろうか。。。
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