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桑港(サンフランシスコ)のみおこしのレビュー・感想・評価

桑港(サンフランシスコ)(1936年製作の映画)
3.7
ここ15年以上突然やってくるクラシック映画鑑賞欲!!そんな時は、知られざる名作をなるべく意識して観るようにしています。

1905年のサンフランシスコ。火事によって職を失った歌姫メリーは、地元の顔役で巨大クラブ"パラダイス"の経営者でもあるブラッキーに見出される。2人の間に愛情が芽生えるが、上流階級の紳士バーレーもひょんなことからメリーをスカウトし...。

クラーク・ゲーブル、スペンサー・トレイシー、ジャネット・マクドナルドの三大スター共演の名作。そもそもゲーブルとトレイシーの共演って、とてつもなくレアなのでは...?荒々しいブラッキーと寡黙なメリン神父役、それぞれハマり役で素晴らしかったです。
要約すると一人の女性をめぐるラブストーリーなのですが、本作が名作として今もなお語り継がれる要因はその点よりは、1906年に実際にあったサンフランシスコ大地震の様子が再現されている点かなと。これから約40年後に『ポセイドン・アドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』などのパニック映画の金字塔が誕生するわけですが、こんな昔から災害をテーマにした作品があったとは...。
およそマグニチュード7.8と言われる超大型地震により、街のほとんどが壊滅してしまったということですが、時代を全く感じさせないリアルな視覚効果には息を呑みました。本当に実寸大のセットを作って、焼き払ったり地割れを起こしたと推測されますが、それにしてもあのスペクタクルシーンは今観ても本当に怖かったです...。二次災害の様子も鮮明に描かれていて、改めて地震の恐怖を痛感させられました。

前半はゆるめのミュージカルっぽいシークエンスも続くので比較的冗長な展開が続くのですが、後半の大地震のスペクタクル・シーンで一気に物語の流れが変わり、ぐいっと引き込まれました。
災害を乗り越え、キャラクター達も人として一歩成長していく描写も心揺さぶられました。自信家だったブラッキーが、全てを失って人間らしい思いやりだったり、命の尊厳に目覚めていく姿をゲーブルが熱演していて、思わずホロリ。
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