Angiii

潮騒のAngiiiのレビュー・感想・評価

潮騒(1954年製作の映画)
5.0
水をも弾く浅黒い肌、日焼けによって色が褪せ気味な唇から吐かれる甘酸っぱい息吹を今にも感じそうだ。

三島由紀夫原作『潮騒』は本当に好きな小説だから、大好きな久保明が演じてくれて本当に良かった。ちょい役で出てくる三船敏郎も渋くて良い。
初恋の人が久保明に似ていたものだから、ふとした目元の陰に去りし青春を重ね合わせて胸元を締め付ける郷愁を味わったりもした。

映画というか小説への感想でもあるが、二人が火越しに自分をさらけ出すシーンが本当に良い。性への目覚めというか、リビドーを付された原始的人間の純粋な行動、いかなる文脈付与もなされていない愛の形、他人との関係性がみすぼらしい名詞に固定された時代に生きる孤独な人間の心にこれほど残酷に刺さるものはない。


とても美しゅうございました。
Angiii

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