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タンスと二人の男のJeffreyのレビュー・感想・評価

タンスと二人の男(1958年製作の映画)
3.5
「タンスと二人の男」

本作はポランスキーがポーランドで1958年に監督したモノクロ映画の14分の短編映画で、一転して詩的かつ寓話的で明快な作品を撮りたいと言う気持ちになった彼が、学校の制作ながら、課題作とは違う、本格的な短編として取り組んだのが本作とのことだ。ブリュッセル万博の中で行われた実験映画祭に出品され、その見事な出来栄えによってブロンズ賞を受賞。ここでの評判の後、学生映画としてはポーランドで初めて劇場ロードショーにいたり、ポランスキーの記念碑的作品となる。2人の男がタンスを持って海から歩いてくる。2人はタンスを持ったままポーランドの街を歩き続ける。途中で美しい少女と出会い、楽しいひとときを過ごしたりするが、それもつかの間、不良の集団に絡まれて、2人は殴られ、タンスも傷物となる。2人は再び海岸に戻り、海の中へ帰っていく。このシュールな感覚は、ベケット的、イヨネスコ的と言われることがあるそうだ。パリ生まれながらポーランドで育ったポランスキーは成人後に初めてのパリ旅行で見た舞台が、現在もユシュット劇場で上映し続けているウジューヌ・イヨネスコ作(禿の女歌手)であった。以来ゴンブロヴィチ、シュルツわ、カフカといった作家のユーモアや不条理な部分に魅せられて行ったと言うのだ。

この作品で1番の注目はコメダのジャズ演奏による音楽であること言うまでもなく、スターリン政権下に堕落した音楽としてロシアのみならず東欧でも演奏を禁止されていたジャズだが、53年3月5日にスターリンが死去するや、次々と演奏されるようになったそうだ。コメダも55年に本格デビューするや、コンサートや音楽祭で人気を集めるようになり、演奏会を聴いて魅力されたポランスキーは学生による短編映画にもかかわらず、作曲を依頼したそうだ。これを承諾したコメダは、彼が率いるジャズセクステット(六重奏団)セクテーテ・コメディーによるマイルス・デイヴィス風即興演奏で、初めて映画音楽に挑戦した。以後、2人のコラボは68年までの作品に続くが、呪われた映画「ローズマリーの赤ちゃん」でゴールデングローブ賞候補となった際に訪れたハリウッドで事故にあい、昏睡状態となり帰国後に他界してしまっている。確か、本作の少女役はポランスキー夫人(59年から61年)となる女優のバルバラ・ラスである。
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