えそじま

妻よ薔薇のやうにのえそじまのレビュー・感想・評価

妻よ薔薇のやうに(1935年製作の映画)
4.1
妻子の心配を他所に、身勝手な父親は芸者上がりの妾と新たな家庭をつくっていたのだ。
砂金を探しに出たまま戻らない父親の行方を追った娘は、自身や母親が捨てられたことを知る。

夫に捨てられた幸薄い女房でありながらも才ある歌人として誉れ高い正妻悦子、残された相手家族の絶望を想い、貧困を顧みず仕送りを続ける献身的な妾お雪。一人の男と二人の女の心模様を娘君子の視点からたどる成瀬巳喜男の初期代表作である。

まだ日中戦争すら開戦していない昭和初期の封建的社会で揺れ動く女性心の機微が、急なパンの躍動感溢れるショットで軽やかに映しだされている。名邦画監督特有の鋭いモダニズムだ。ラストのオーバーラップも素晴らしい。
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