CHEBUNBUN

SAFEのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

SAFE(1995年製作の映画)
4.0
【コロナ時代に再評価を】
『死ぬまでに観たい映画1001本』掲載のトッド・ヘインズ作品。日本ではVHS時代に『ケミカル・シンドローム』という題で知られていたらしい。

そして、本作は1995年の作品にもかかわらず全く色褪せない。寧ろ、コロナ時代を予見していたかのような作品となっている。

ブルジョワ家庭の主婦は、ヘアサロンにフィットネスに家のリフォームに大忙し!しかし、最近倦怠感に悩まされている。医者に診てもらっても原因がよくわからない。状況はドンドン悪くなり、ヘアサロン中に鼻血が出たり、フィットネスもまともにできなくなる。やがて、それが《化学物質過敏症》だと気づき、セラピーに通うという内容だ。

トッド・ヘインズは、空間でもって倦怠を表象し、単なる化学物質過敏症の話を超えた世界を描こうとしている。

例えば、前半と後半の空間構造に注目してほしい。ある間で家政婦が家事をし、その横でリフォーム業者が仕事をしている、その先の空間で主婦が右往左往する居心地の悪さやヘアサロン、フィットネスクラブの密と疎を分離させた居心地の悪さは彼女の心理を端的に表している。また、彼女は怪しい集団に入る。「安全の場=オアシス」を作ろうと異様な空気に包まれる共同体に彼女は身を投じるのだが、何処か疎外された感触があり、それが段々と広大な空間にポツンと佇む彼女という構図に表れていく。

コロナ時代の病と精神の関連性を予言したかのようなこの作品は、今観ると大傑作に思えるであろう。会食はビニールの壁越しで会話する描写なんか今そのものである。
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