千年女優

きみに読む物語の千年女優のレビュー・感想・評価

きみに読む物語(2004年製作の映画)
3.5
認知症のため療養施設に入寮している過去の記憶を失いかけている老婆と、彼女をなにかと気にかける同じ施設の仲間の老人。古いノートに記された、1940年代のアメリカ南部シーブルックを舞台にした別荘に夏期休暇で訪れた富豪の娘と地元の材木置き場で働く男との身分違いの恋物語を、老婆に読み聞かせる老人の様を綴った恋愛映画です。

俳優一家に生まれたニック・カサヴェテスが監督した恋愛映画で、語られる恋物語こそありふれたものですが、盛り上がりの一時を切り取ることの多い恋愛映画にあって、ある仕掛けによって消えゆく記憶の中の消せない想いを描いたことが多くの人に愛される美しいラブストーリーとして評価され、一億ドルを超える興行収入を記録しました。

仕掛け自体は予定調和ですが、むしろ観客の希望を叶える類のお話です。本作の白眉は天真爛漫でバラエティ豊かな表情を見せるレイチェル・マクアダムスの好演に他ならず、彼女の演じるヒロインのあけすけで気取らない性格に惹かれて思わず応援したくなります。その存在感が恋物語の思い入れを強めて仕掛けの感慨深さに繋げる一作です。
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