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スウィート ヒアアフターのkuuのレビュー・感想・評価

スウィート ヒアアフター(1997年製作の映画)
3.5
『スウィート ヒアアフター』
原題The Sweet Hereafter
製作年1997。上映時間110。
ラッセル・バンクスの小説『この世を離れて』(1991年)が原作の実写化作品。

今作品は加奈陀(カナダ)の田舎町が舞台なんすわ。
暮らしとんのは、みんな知り合いってな関係yhoみたいな感じの小せぇ平穏な町。
せや、そないな平穏は、
ある日俄にに破られる。
学校に向かうスクールバスがスベってもうて事故を起こして湖に落ち22人が死んでしまう。
事件は小さな集落に消えへん傷を残し、その傷からは醜く爛れた膿がこぼれ落ちてくる。
事件をネタに一発当てたろうって考えたっテクある弁護士が町にやって来る。
彼は住人を説得して、当局相手に訴訟を起こさせようとする。
最近鳴りを潜めとるけど日本じゃ過払い金請求してみませんか?みたいなクソ弁護士。
はたまた、田舎の爺さん婆さんに口八丁手八丁で取り込んで成年後見制度を悪用して、爺さん婆さんが亡くなってからその土地を名義変更して売り飛ばすクソ弁護士。
最近は坊主と弁護士はロクなやつがおらへん。
どこにでも跋扈する銭金弁護士はいる。
やり場のない怒りに形を与え、それを銭に変える。
それが今作品で老弁護士ミッチェル・スティーヴンス(イアン・ホルムの仕事。
彼は(まあ弁護士やから) 徹底しとるマキャベリストとして描かれとる。
相手の顔を見ては口説き文句を変える様子には弁護士アルアルで笑えるものがある。
まぁ、彼は功利主義者だけに、己の原則には忠実で勤勉、弁護士やもんなぁ。ヤメ検弁護士はもう一つ上手をいくけど。
原則てのは即ち真実を究明することや。
せや、彼の調査は予想もしいひんかったモンを掘り起こしちまう。
見ため平和に見えとった町の錯綜する人間関係が明るみに出されちまうんねんなぁ。
冷えた親子関係、不倫から近親相姦までが。
弁護士に対立しよるんは事件で一人娘をなくした男。
彼は弁護士に対して、繰り返し調査を中止を懇願する。
村には村のやり方があるさかいに、かき回しても録やことあらへんと。
彼は弁護士のやり方(真実を究明し、 不定形の怒りに形を与える)は破局を招くこって知っとる。
せや、映画は常に破局をもたらすモンの側に立つ。
たとえその結果がカタストロフをもたらすとわかっていても、探偵は真実を解き明かす様に。
今作品には勝利者はいいひん。
弁護士もまた、己の調査が招いた破局から逃れられない。
今作品がモチーフにしとるハーメルンの笛吹きがそうであるように
(ハーメルンの笛吹き男ちゅうのは14世紀ごろから語られている童話で、ネズミが大量発生しとったハーメルンちゅう街で、一人の笛吹き男がネズミを退治したものの、街の住民たちは約束していた報酬を支払わず、それに怒った笛吹き男はその笛の音を使って街の子供をさらっちまう。
これが物語の概要だ。言い伝えによっては足の不自由な子供が1人だけ遅れたという話や、盲目・聾者の子供だけが取り残されたという話も伝わっている。
大人たちの欺瞞を告発するのは笛吹きの踊りに間に合わなかった足の悪い子供である)、この作品の話にもめでたしめでたしはない。
万人受けする映画やないと思いました。
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