ほーりー

マルクス兄弟 オペラは踊る/マルクス兄弟オペラの夜のほーりーのレビュー・感想・評価

4.6
マルクス兄弟MGM社移籍第一作「オペラは踊る」はまさに喜劇映画のお手本のような大傑作。

あまりにもナンセンスでアナーキーすぎた前作「我輩はカモである」が興行的に惨敗し、所属していたパラマウント社から契約解除されたマルクス兄弟。

末弟ゼッポがユニットを脱退してしまう状況の中、若き天才プロデューサーであるアービング・G・タルバーグからの誘いによって、マルクス兄弟は再び息を吹き返すことになったという。

クレージーさでいえば勿論「我輩は~」の方に軍配をあげるんだけど、映画としてのクオリティの高さではやっぱり「オペラ~」の方がよく出来ていると思う。

才能はあるもののなかなか日の目を見ない若いテノール歌手とその恋人のために、マルクス兄弟が奔走するというストーリー。

そもそもマルクス兄弟の映画にちゃんとしたストーリーがあるということ自体、とんでもない大進歩であり(苦笑)、それもこれも製作のタルバーグの意向が大きかったという。

普通、ハーポなんてイカれたキャラクターは扱いが難しいはずなのに、冒頭、彼が理不尽にいじめられるシーンを挿入することで観客がハーポに自然と共感できるように持っていってる。

そして最後の大劇場を舞台に繰り広げられるハーポの大立回りも凄い。

チコの使い方も巧い。特に敵役であるオペラ歌手に対して「よく聞け。あれこそ本当の歌だ」とチコが啖呵を切るシーンが印象的だった。

ハーポやグルーチョが強烈すぎるので二人の引き立て役の感がある長兄チコだがちゃんとおいしいところを兄貴に持たせているところもエライ。

そして兄弟の名人芸であるチコのピアノ演奏とハーポのハープ演奏を手抜かりなく用意しているのも良い。

確かに過激さは少し鳴りを潜めたものの、ひとつひとつのギャグのクオリティはかなり高い。

これもタルバーグの意向で、撮影前にネタを何度も舞台にかけて、観客の反応が良かったものをブラシュアップしてから使用するほどの念の入れようだったという。

この映画を観るとタルバーグが如何に才能豊かだったいうことが本当によくわかる。つくづく本作の1年後にまだ37才という若さで亡くなってしまうのが勿体ない。

■映画 DATA==========================
監督:サム・ウッド
脚本:ジョージ・S・カウフマン/モリー・リスキンド
製作:アーヴィング・タルバーグ(クレジットなし)
音楽:ハーバート・ストサート
撮影:メリット・B・ガースタッド
公開:1935年11月15日(米)/1936年4月16日(日)
ほーりー

ほーりー