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ミラーズのMOCOのレビュー・感想・評価

ミラーズ(2008年製作の映画)
3.0
「私は『聖マシューズ病院』にいた頃ケーン先生の指導で人格障害の治療を受けていました。それは患者を鏡張りの部屋に数日間監禁し自分自身のイメージと向き合うというものでした。
 ところがケーン先生の治療は間違いで私は統合失調症ではなかったの、病気ではなかったの。取り憑いていたものは私の体から抜け出して鏡の中へ入っていきました。
 その日以来それは人を殺しては魂を集めています。
 残念ですが私が『聖マシューズ病院』に戻れば、悪霊を鏡から現実の世界へ解き放ってしまうかも知れません。
 私にできることは祈ることだけです」(アン・エシカー)


 誤って人を射殺してしまった警察官のベン・カーソンは謹慎となり、事件の重圧からアルコールに逃げ、家庭は崩壊し二人の子供を妻に預けて別居状態が続いています。
 ベンはアルコールを断ち子供たちの養育費のために警備の仕事をはじめます。
 
 ベンが警備する建物は、元々は『聖マシューズ病院』だったのですが閉鎖後、歴史的価値がある建物をメレディス家が買収し百貨店メイフラワー1号店に生まれ代わったのですが、5年前の大火災で多くの死傷者を出して修復されることなく廃墟となっています。

 ベンは夜間勤務に着任早々、前任の警備員が磨きあげた鏡にどんなに擦っても拭き取ることができない無数の手の跡を見つけます。

 ベンは身を寄せている妹の家で鏡に映った自分の顔が激しく歪み飛び上がるほど驚き、それを発端に鏡を通した怪奇現象がはじまります。それは同時にベンの別居中の家族にも、妹にも起こるようになります。

 警備中、ベンは鏡についた手形に触れ大怪我をし、火災に巻き込まれる幻覚を見たり鏡に映った大火傷に苦しむ少女を見たりします。
 ベンはビルの中で前任のゲイリー・ルイスの財布を拾い、その財布の中に「エシカー(esseker)」と書かれたメモを見つけます。
 突如聞こえてきた女性の叫び声のもとへ駆けつけると、そこには実体は無いのに鏡にだけ映っている焼けただれた女性が・・・。

  ベンはある日、すでになくなって何日も経つ前任のゲイリーが差出人になった小包を受けとります。中にはメイフラワービルで起こった大火災の新聞記事の切り抜きが沢山ありました。

 ベンはゲイリーの遺体が別居中の妻で解剖医のエイミーの勤め先にあることが判ると強引に遺体を確認しに行きます。

 ゲイリーは鏡の破片で自らの首を切ったのですが、現場写真の凶器は血だらけなのに鏡に映った凶器には血がついていないことに気がついたベンはエイミーに写真を示すのですが「断酒のために飲む薬が幻覚を見せている」と言われ引き下がります。

 妹アンジェラの家に戻ったベンは浴槽で無残な死を遂げているアンジェラを発見し、メイフラワービルに戻り、鏡を割ろうとするのですが・・・。
 ベンは鏡に現れた「エシカー」という文字を見つけます。

  ベンは同僚だった警察官のラリーにエシカーとメイフラワービルに放火したテレンス・ベリーを調べてもらい、ベリーが逮捕後に入院していた精神病院を訪れます。
 記録されたベリーの聴取ビデオで「鏡を始末するために放火した」「鏡に妻と子供たちを殺された」「皆エシカーを探している」と供述するシーンを見たベンは家族が巻き込まれることを恐れて、別居中のエイミーの家に向かい家中から鏡を撤去し始めるのですが家政婦の連絡で帰宅したエイミーに今の状況を証明できず立ち去ることになります。
 帰り道、助手席側のサイドミラーに「鏡に映る物は思ったよりも近くにある」という安全警告文に気付いたベンはメイフラワービルに向かい 地下の通路を進むと壁に書かれた『聖マシューズ病院』のプレートを見つけます。

 プレートのある壁を崩すと中は広い部屋になっており、中央に拘束具の付いた椅子があり、椅子は360°マジックミラーの鏡面に囲まれているのです。

 再びラリーに病院とエシカーについて調べてもらったベンは、アンナ・エシカーに関する迷宮入り事件の資料を受け取ります。
 資料には精神科の患者だったエシカーは12歳の1952年10月6日多くの患者たちとの殺し合いで死亡したとあるのですが、資料をくま無く調べたベンは、アンナは事件の2日前に退院した記録があることを発見します。

  翌朝、エイミーは鏡の中に映る息子が本人と違う動きをしていることに気がつきベンに助けを求めます。
 駆けつけたベンは、エイミーと協力して家にある鏡や鏡のように光が反射する物を全てペンキで塗りつぶし、窓ガラスは新聞紙で覆います。

 ベンはエシカーの故郷ペンシルベニア州に向かい、エ
シカーの兄であるロバート・エシカーの家に辿り着きます。

 ロバートは妹(エシカー)は病院で死亡したと話すのですが、2日前の退院記録を見せるとあっさりエシカーが生きていることを認めます。
「誰が診てもエシカーに起こる奇妙な現象をどうすることもできず、鏡のない『聖アウグスティン修道院』へ送った」と・・・

  ベンは『聖アウグスティン修道院』で大人になったエシカーとの面会を果たします。
 ベンは「メイフラワービルにある鏡は自身の統合失調症治療のために使われたが、間違った診断で間違った治療だった」と聞かされます。
 ジェシカーは、取り憑いていた悪霊が鏡の中に入ってしまったと言い「自分が行けば悪霊が解き放たれる」と話し、ベンの家族を救うためにメイフラワーに行くことを拒みます。

 その頃エイミーの家ではありとあらゆる水道の蛇口が開かれ、家中の床が水浸しになり、その水面は鏡のように周りの景色を映しだし・・・。
 悪霊にとりつかれたマイケルにより鏡面のペンキは剥がされマイケルは鏡の中へ・・・。
 ベンは再び『聖アウグスティン修道院』を訪れ、エシカーを銃で脅し連れ出すとメイフラワービルの地下へ向かいます。

 エシカーはベンの家族を救うために自らの意思で椅子に縛り付けられ、目を開けるとマジックミラーは粉々に砕け散り、同時にエイミーたちは悪霊から解放されます。

 悪霊は鏡から現実の世界へ解き放たれ、エシカーは再び悪霊にとり憑かれベンに襲い掛かります。
 壮絶な戦いで壊れたガス管から漏れ始めたガスにベンは発砲しガス爆発でエシカーは火だるまになり崩落した瓦礫の下敷きになります。
  ベンはボロボロになりながら地上に這い出るのですが・・・。

 
 エシカーと共に悪霊が消え去り解決したかのように思える展開は、導入部の鏡に着いた拭き取れない手形のシーンで「この映画の落ちは・・・」と予想した通りの「落ち」になってしまい非常に残念です。

 レンタル開始頃にレンタルで観賞したのですが、記憶の通り映像は怖かったのですが、鏡の中にいる何かが何であったのか?何を求めていたのか?全く思い出せなくての再観賞でした。

 夏だから涼を求めて怖い映画・・・も、今では家庭にエアコンがあるのがあたりまえになり、リビングは快適になってしまい、自分は自分で怖い映画慣れしたのか大人になってしまったのかハマーの「吸血鬼ドラキュラ」や「遊星からの物体X」を初めて観たときのあの怖さや「死霊のはらわた」や「ビョンド」を初めて観たときに与えられた「祟られるのではないだろうか」という恐怖感を味わうこともなくなってしまいました。
 映像は昔の映画より遥かに凄くて怖いのに、昔心底怖い感覚で観た映画を上回る怖い映画に出会うことはなくなってしまったのはどうしてなのでしょう?


  キーファー・サザーランド演じるベン・カーソンの日本語吹替えは『24 -TWENTY FOUR-』の小山力也氏。家庭の中で、あの口調で喋られては奥さんはちょっと疲れます・・・。
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