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髪結いの亭主のkuuのレビュー・感想・評価

髪結いの亭主(1990年製作の映画)
3.9
『髪結いの亭主』
原題 Le mari de la coiffeuse
製作年 1990年。上映時間 82分。
配フランスの名匠パトリス・ルコント監督の名を一躍世に知らしめたラブストーリー。
日本初公開は1991年で、2011年には高画質&高音質でよみがえらせたデジタルリマスター版もリバイバル公開された。

少年時代に女性理髪師に憧れを抱いて以来、理髪師との結婚を夢見てきたアントワーヌ。
やがて中年を迎えた彼は、美しい理髪師マチルドに出会い、彼女を射止めることに成功する。
それから10年間、マチルドとの愛に溢れた平穏な日々が過ぎていくが……。

キャッチコピーは『かほりたつ、官能』。
淀川長治さんは『甘く、ほろ苦い人生のスケッチ』と云ってたそうな。
それだけでも十分な感想になるかな。
昼下がりにポトフと玉子サンドを作りたべてた。
何気にBS松竹東急を付けたらやってた。
ほろ苦いなぁ。
点てたコーヒーも今日はほろ苦かった。
淀川さんの言葉ホンマ巧い!
ギリシャのいにしえの物語も連想してしまう。
全員が全員そうやないとは思うがフランス人は憂鬱の達人なんかなぁなんて思ってしまう今作品。この美しい映画を観た後ほど、悲しみがうれしいと妙な想いに耽る作品はあまりないかな。
思います。
フランス人好み気まぐれで、物憂げで、一人称で、ある男の生涯をかけた性的執着が、極めて一夫一婦的な愛へと発展していく様を描いている。
それに、フェティシズムとパラフィリアに学ぶ愛の姿かな。
パトリス・ルコント監督は、限界に立ち向かい、物語上の慣習が通常許容する以上に踏み込むことを厭わない姿勢を今作品では見せている。
自分の髪を切ってくれた女性に夢中になった少年が、中年になって、男性の頭髪だけを扱う美しい理髪師と結婚したいという願望を叶え続ける機会を与えられるちゅう、独特な寓話の世界を創り上げている。
でもまぁ、これは現実ではない。
この物語は、ほとんどいつも夏の黄金色に包まれているように見えるし、フランスの小さな海岸沿いの町で起こる。
それがまた、キャッチコピー通り匂いたつ。
登場人物たちは、仕事、収入、顧客数といった日常的なことにはまったく無頓着に見える。
人生全般が、おそらくは老いにまつわることを除けば、祝福されるべきもののよう。
これは、理想的で永続的な愛。
ホンでもって、終着点に達した後の余韻の薫りが残るちゅう映画的視点作品と云える。
ルコント監督は、登場人物の存在のさまざまな些細なことを蛇行させる代わりに、アントワーヌ・ジャン・ロシュフォールとマチルド(アンナ・ガリエナ)のロマンスに非常に焦点を絞っている。
また、マチルドとアントワーヌの住む狭い現実を目の当たりにする。
そこでは、二人が共有し、惹かれ合う事実上すべてのことが、結婚式や愛の営みを含め、二人のサロンで起こる。
こうして、マチルドの世界がアントワーヌの存在だけで完結し、アントワーヌの世界が彼女の存在だけで完結していることを目の当たりにする。
シンプルなストーリーやけど、その語り口はユニークそのもの。
故に、観終えたあと悲しさの薫りが残る
全キャストの演技は巧みで、中でも主役の演技は完璧かな。
ガリエナは、天使のようでもあり、さりげなく官能的でもある美容師を演じ、仕事と家庭の両方が重なり合う関係に心地よさを感じさせながらも、どんなに素晴らしい愛であっても、その道は一方向にしか進まないと哲学的に確信している。
今作品は、ちょいオーバーやけど歓喜と哀愁に満ちた喜びの作品でした。
パトリス・ルコント監督は、愛の至福、悲しみ、風変わりさを実感させることに成功し、素晴らしく魅力的な映画を作り上げた。
昼下がりに善き作品をみれちょい得したかな。
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