つるみん

泣きぬれた天使のつるみんのレビュー・感想・評価

泣きぬれた天使(1942年製作の映画)
3.7
〝美しい悲劇〟とはまさにこの事を言うのであろう。

戦時中、盲目の彫刻家ジャックがまるで天使のような美貌、そして心を持ったジュヌヴィエーヴの支えによって生きる道を見出し、深い仲になるが、そこへ、かつて結婚を約束したジュヌヴィエーヴの恋人ボブが戦場から帰ってくる。彼女はボブは戦死したと勝手に思い込んでいて、究極の選択を迫られるの展開になるのだが………。

愛の選択に苦しむ乙女心を繊細に描いている作品であります。

本作はフランス芸術の美しさではなく、〝恋愛〟の美しさと寂しさを兼ね備えた映画であって、内容は一見ありきたりな展開にみえるが〝天井桟敷の人々〟のジャン=ルイ・バローは勿論のこと、わずか4作品のみの出演のギャビー・アンドレの演技力に惹かれ退屈する事なくラストシーンを迎えることができました。

ジャックが視力を失ったのも、ジュヌヴィエーヴやボブが愛する人の事で心を痛みつけられたのも全て〝戦争〟さえなければ誰1人〝失う〟という事はなかったのです。

恋愛において若者たちの青臭さというものは存分に表現されていて、かつ大人の世界に一歩踏み出そうとしている登場人物たちの描写も上手い。その点においては、いかにも〝フランス映画〟らしい反戦映画と言えるでしょう。
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