オルキリア元ちきーた

オテサーネク 妄想の子供のオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)
3.8
この監督の作品は、みんなエグくて素敵なのです。

子供だから純粋で可愛いとか
母親だから優しいとか
赤ちゃんは癒される存在だとか
老人だから思慮深いとか
父親は頼もしく寛大だとか
映画の中の食事は美味しそうだとか
ファンタジー映画だから汚いものは出てこないとか
御伽話だからハッピーエンドだとか
子供向け的御伽話だから大人の事情やエロは絡めない
などなどといった

まぁいわゆる「アメリカのハリウッドやディズニーあたりが広めた毒にも薬にもならない教育的にダメな放送コードによる

「〇〇だからコレコレだ」

という「与えられた固定観念」の殻に自ら閉じ込もって安心している「温室のワタシ」に対して

この監督は
「見たらいけないのに見たくなる駄目なもの」をどんどん目の前に晒してくれます。

守ってくれていた固定観念の殻を木っ端微塵に砕かれて
あとは丸裸のひ弱な精神に冷水をバッシャバッシャと浴びせられるようです。

映画を観た後
酷い目に遭った…と思いながら
とんでもない映画から離れ
ブルブル震えながら現実の「安全で温かい殻の中」に潜り込んで一安心するのですが

以前の様な「何も知らない清らかで安らかな景色」だった筈の身の回りが
この監督の作品を通過した後は
どこか取り繕っていて
偽善めいていて
何かをそっと隠しているのではないか?
という疑心暗鬼でしか見られなくなります。

そうなったら、もうシュバングマイエルの術中やにハマった証拠です。

本作はそんな監督の提示する教訓のお話。

・娘が肉付きよくなってきたら、ミニスカートは履かせないようにするべき。
・父親は家庭で偉そうに威張り散らしてばかりだと、娘や妻にスルーされる。
・ヨボヨボの爺さんだと思って敬っていると、実は現役のスケベジジイの場合もあるので注意。
・酔っ払うと言動がテキトーになる旦那には酒を控えさせること
・別荘を借りる時は隣人のアドバイスに耳を貸すな
・ヤバいモノは共用スペースに隠さない
・庭でキャベツを育てない
・耕作用クワは凶器になるので放置しない
・切り株を子供に見立てて妻に渡すな
・お腹の空いた子供に無闇に近づかない
・ママが作ってくれるご飯がいつも美味しそうだとは限らない
・赤ちゃんだから可愛いとは限らない
・何でも好き嫌いなく食べればいいってもんじゃない

様々なエロもグロも目の前にぶちまけて
私達を震え上がらせてくれる監督の愛たるや!!!

良い子は真似しないでね!
シュヴァンクマイエルとの約束だよ!!