あしからず

家宝のあしからずのレビュー・感想・評価

家宝(2002年製作の映画)
4.1
家宝は自ら輝きを増すらしい。
ジャンヌダルクのように聖女と魔女2つの顔をもつカーミラは、その名の通り不死の吸血鬼のような老齢さと恐ろしい落ち着きをもってファムファタールの座に君臨している。
赤と青の服で赤子を抱く聖母のイメージから喪服の漆黒への変遷がもはや爽やか。
オリヴェイラらしい客観的な視点とレナート・ベルタの流麗なカメラ、フィックス長回しが嫌らしさをうまく回避して芸術性を高めていた。度々挿入されるポルトガルの景色と、赤が際立つ緑の照明が美しい。
「ワインを注ぎたくなる背中」はポルトの名産がワインだからか、それにしてもいい台詞。

カーミラには確かにギャンブル狂の父親の血が流れているが、“知性の第一歩=善意”と謳うところは完全にプロ。
ジャンヌ・ダルクを反転した彼女は地獄の業火(火刑)も回避し、見事な逆転勝利をキメる。ラスト明らかになる真実もスパイシー。
パールのネックレスが千切れる映画はだいたい名作の法則(「青い青い海」みたい…)
あしからず

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