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ホフマン物語のhorahukiのレビュー・感想・評価

ホフマン物語(1951年製作の映画)
3.8
『ミッドサマー』の理解を深めるため&『血を吸うカメラ』見る前の準備運動的に見ました。

マイケルパウエル&エメリックプレスバーガーの黄金コンビによるオペラミュージカルで、役者陣の美声と迫力はもちろんのこと、映像の圧倒的な魅力に溢れた作品でした。

絵画の背景美術に溶け込むかのような現実の役者たちと、交差するそれぞれの運動、画面の左右、奥・手前に配置された情報とそれぞれがそれぞれに目まぐるしく動き回る人々。平面を3Dへと変貌させ前後運動を上下運動へと変えてしまうアイデア。陶酔してしまうほどの画面構築と動き回るキャラクターたち、舞台では絶対に味わえない躍動感のあるカメラで存分に映画としての楽しさをあじわえる凄まじい作品。

そんな5点満点つけたくなるような、映像による高揚感を昂らせてくれるシーンの数々の中に、好みの問題だと思うけど、一気に現実に戻されるというか、冷めてしまうような箇所が散見され、「めっちゃ好き!」と「シンドイ…早送りしたい…」が交互に訪れるような5.0と1.0を行ったり来たりするような感覚になった。5.0への振れ幅が途轍もないからこそ、平凡に思えてしまうところの感情の冷却感が際立つというか。

とはいえ、高揚感の瞬間火力はエグくて、一箇所とんでもないところもあったし、傑作とされる理由も納得。ほぼほぼ5.0のところで占められてたし!でも個人的にはこのコンビなら『黒水仙』の方が好き。

アリアスター監督が実際に本作のどこを参考にしたのかはわかりませんが、本作では4種類のbreakupの物語が紡がれていて、特に2つ目のオランピアの物語と4つ目のアントニアの物語からは『ミッドサマー』成分がガッツリと感じられたし、その他の2つからもめちゃ伝わってきた。

2話目オランピアの物語における両者の温度差と糸をたぐられている感覚、踊る者と見守る者との意識の相違、見えているようで見通せていない男の目。その決して相入れない感情は3話目でも中身を変えて情欲として描かれ、ニコラウスの忠告との間で揺れる愚かさが炙り出される。そして4話目アントニアの物語では、救いとも取れるような悪魔的誘惑の選択へと繋がる。どれもめちゃくちゃ『ミッドサマー』っぽい。

というかついに来週公開ですね!もう一回くらい見てから字幕の答え合わせも兼ねて劇場行こうと思ってます!あの衝撃シーンが日本版では修正されてるのかどうかも気になるし…😅
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