猫脳髄

デビルズ・ゾーンの猫脳髄のレビュー・感想・評価

デビルズ・ゾーン(1978年製作の映画)
3.7
お人形版「悪魔のいけにえ」なスラッシャー・ホラー。デヴィッド・シュモーラーの大学卒業製作が原形になっているそうだが、シナリオの枠組みや特徴的なカットは公言こそされていないがトビー・フーパ―「悪魔のいけにえ」(1974)そっくりである。人形を模した仮面の怪人も造形をレザー・フェイスに寄せており、強い影響を感じる。

シュモーラーは「キッチュ(あるいはキャンプ)なフーパ―」と呼ぶのがふさわしい。両作品とも怪人は犠牲者の似姿を収集するが、本作では皮膚から石膏型(デスマスク)やマネキン化といった無機的なまがいものへと変容している。この特性のため、怪人にフィジカルな暴力性だけでなく、特殊能力を付与することになってしまったが、演出上のギミックとして遺憾なく発揮されている。特にクライマックスでの犠牲者への処断は大いに見所である。

また、ギャグ・シーンをさらりと盛り込むのもフーパ―的で憎い。このほか、音楽もメイン・テーマをはじめおよそホラー作品とは思えないユーモラスなものとなっており、作品テーマを加味して不気味さを盛り上げる。言わばフーパ―の「本歌取り」的な作品ではあるが、そのひねり方は実はとても魅力的である。

メイン・キャラクターのチャック・コナーズは、それまでの役柄のイメージから脱却する意気込みで引き受けたそうだが、あの力強い大あごを振るった(ゆえにすぐにネタバレするが)熱演で盛り上げる。他にも、後にボンド・ガールを演じるタニア・ロバーツが犠牲者のひとりとして出演している。
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