我が道を行くライオン

愛の残像の我が道を行くライオンのレビュー・感想・評価

愛の残像(2008年製作の映画)
3.7
月並みの幸せ、それは悪くないものだが、何かを失った経験のある者にとっては恐ろしくもなり得る。自分は不幸であるべきだという利己的価値観を自分自身に植え付け、自分勝手に苦しむ。その苦悩が、キャロル(ローラ・スメット)からフランソワ(ルイ・ガレル)へ概念的霊性を通じて渡り、事の顛末に至る。

「愛」をテーマにして、苦悩の中で死にゆく男女を描いた映画は沢山あるが、本作は「愛」と「死」は直接的には繋がらず、自分自身の内に秘めた「利己的後悔」が仲人を務めている、ということを伝えたかったのでは。モノクロの世界で、奇妙に響き渡る音楽と共に映る美しい男女に魅了された。佳作であり寡作。