櫻イミト

裸の町の櫻イミトのレビュー・感想・評価

裸の町(1948年製作の映画)
3.5
元ジャーナリストが製作&ナレーターを務めた刑事ドラマ。当時としては画期的なニューヨーク市街でのオールロケ撮影で、後の映画人に大きな影響を与えた一本。

「巴里の空の下セーヌは流れる」(1951)を観た折に、関連作品として本作の名前が挙がっていたので興味を持って鑑賞。町の雑感を積み重ねた導入やふんだんな街頭ロケは確かに連想させるものがあり、映画で街の個性を描くという方向性も似ていた。ただ、本作の主軸は人間描写ではなく、刑事たちの地道な捜査を通してニューヨークという街の側面を描くことにあり、製作者マーク・へリンジャ―の元ジャーナリストならではの着想を感じた。ノワール作品ではあるが刑事たちの聞き込みや取り調べをリアリズムで描く異色の作風で、どちらかというと地味な演出。もっとドギツイ街の裏側を描いても良さそうだが等身大のリアリズムにこだわったようだ。。しかし、終盤の高架線下やウィリアムバーグ橋ででの追走劇はロケ撮影の魅力にあふれていて、後の「フレンチ・コネクション」(1971)など様々な映画に影響を与えたことが伺える。街頭の店先で次々に聞き取り調査を重ねてく描写は「太陽にほえろ」みたいだった。

直前に「我が道を往く」(1944)を観たばかりだったので、主演の刑事長としてバリー・フィッツジェラルドが登場して何だか微笑ましかった(「我が道~」では助演の老神父役)。

※製作&ナレーターのマーク・ヘリンジャーは本作の完成後、公開を前に急逝した。
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