スギノイチ

三池監獄 兇悪犯のスギノイチのレビュー・感想・評価

三池監獄 兇悪犯(1973年製作の映画)
4.2
冒頭の脱獄囚による輪姦シーンの猥雑さに始まり、泥と暴力、不衛生なエネルギーに満ちた映画だ。
良くも悪くも、東映にしかできない映画だろう。

この映画で描かれる「三池監獄」とは、重罪人ばかりを集めては度を超えた重労働を課し、例えそれで囚人が死んでも、むしろ死刑も兼ねて丁度良い、というとんでもない刑務所である。
囚人は鶴田浩二、穴戸錠、伊吹吾郎、汐路章、大木実と、曲者ぞろい。
対する看守側は、天津敏、金子信雄、山本麟一、安部徹、遠藤辰雄等々…いつもの東映ヴィランが大集合だ。
囚人達も大概だが、この看守らの所業も強姦、リンチ、不正など悪辣を極めている。

そんな濃い陣営の中、目立つのはやっぱり主演の鶴田浩二だ。まず登場シーンからして最高に決まっている。
映画開始15分経過してようやく登場。坊主頭、眉毛無し、傷のある顔という凶悪ヅラ。
拘束された状態にもかかわらず、因縁をつけてきた看守(山本麟一)の頭を踏みつけ、首の骨をへし折り殺害。
収監後、襲ってきた配下を牢名主(穴戸錠)の目前でこれまた首をへし折って返り討ち。
いざ喋ると任侠映画のトーンまんますぎるのがちょっと残念だが。

中盤は若干ダレるが、観客のテンションの頃合いを見計らったかのようにひし美ゆり子が登場。
登場した瞬間から既に胸をはだけており、「あなたの湯たんぽ代わりですたい」などと言って早々に乳を揉ますというプロフェッショナルぶり。以後、清々しい程登場しない。素敵過ぎる。
だが、拷問の疲労と空腹で飢餓状態にある鶴田浩二は、乳そっちのけで白米に食らいつく。
このシーンの白米は本当に美味しそうだ。
「食べんと損ね。生きるも死ぬるも、腹が太うなってからの思案たい」というひし美ゆり子の台詞も良い。

前半は凄くシビアな映画だっただけに、後半から力ずくの任侠調になってしまったのが悔やまれる。
スギノイチ

スギノイチ