みおこし

悪魔が夜来るのみおこしのレビュー・感想・評価

悪魔が夜来る(1942年製作の映画)
3.4
フランスの名匠マルセル・カルネの代表作の1本。

15世紀フランス、巨大な邸宅でのアンヌ姫と騎士ルノーの結婚式に、2人の吟遊詩人の男女がやってくる。実は彼らは結婚を破綻させるために遣わされた悪魔の使いジルとドミニクだった。2人はそれぞれアンヌとルノーに近づき、誘惑することで幸せを壊そうと試みるが…。

映画が製作されたのは1942年、まさにフランスが第二次世界大戦の最中窮地に立たされていた時代です。時代設定は15世紀でありながら、悪魔の使い手がいつしか人間らしい愛の心を取り戻していく物語は、さぞ当時のフランス国民の胸を打っただろうな、と…!人が傷つけ合い、信じ合うこともできなくなっていた時代に、警鐘を鳴らしているかのようなテーマでした。
最初は悪魔が登場したりと、当時の作品としてはかなり斬新なストーリーだったのでいったい何を表現したいんだろうと不思議だったけれど、映画を観進めるうちに、一番伝えたいことは”愛は不滅”ってメッセージなのかなと悟りました。たとえ悪意ある人たちに痛めつけられたとしても、本当の意味での愛に満ちた決断や行動に悪は勝つことはできないし、たとえその過程に犠牲があっても、信じればいつか道は開ける…という戦時中ならではのフランスの国民精神を感じ取った気がします。

まるで中世ヨーロッパの絵画に題材として描かれそうな、何とも言えないファンタジックな物語!古い映画ながら、魔法を使って時を止めたりするようなシーンも登場するのですが、特殊効果もあまり使いすぎず、あくまで人間ドラマとして役者さんの演技中心で物語が進んでいきます。ジル役のアラン・キュニーの愁いを帯びた眼差しが、葛藤する悪魔の使いの闇をより体現していてよかった…!
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