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最高殊勲夫人のほーりーのレビュー・感想・評価

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)
4.1
おそらくこの映画、DVDのジャケット買いした人が多いんではなかろうか。

このポップなジャケットの写真は本作のラストシーンで、1959年の公開から六十年以上経ったとは思えないほど今見ても新鮮な印象を受ける。

さて源氏鶏太原作の『最高殊勲夫人』。早い話が若尾チャンと川口浩隊長のアイドル映画だけど、増村保造監督のスピーディーで乾いた演出で見事にお洒落な青春コメディに仕上がっている。

秘書室の廊下側と社長室の両扉をわざわざ同時に閉めたり、あんみつ屋で店員が去ったあと一斉に人物が喋りだしたりと、何でこんな変な演出をするんだろうと思うのだが、この無駄に思える演出がいい味を効かしている。

三原商事の社長を務める長男・一郎(演:船越英二)、専務である次男・二郎は、それぞれ野々宮家の長女・桃子(演:丹阿彌谷津子)と次女・梨子を妻に娶ったという変わった兄弟。

というのもこらは裕福な三原家の実権を握ろうする長女・桃子の策略だったのだ。

さらに三原家の三男・三郎(演:川口浩)と野々宮家の三女・杏子(演:若尾文子)はそれぞれフリーの身で、桃子はこの二人を結婚させてさらに自分の立場を磐石なものにしようと画策する。

姉の謀略に勘づいた杏子と三郎は、勝手に進められた結婚話なんか乗るもんかい!とお互いに結婚しない宣言する。

早速、それぞれ別の彼氏・彼女を作ろうと奔走するだが……まあ勝手にやってなさいというあらすじのコメディ(笑)

純真ゆえに若尾チャンの行動が小悪魔的で、周りの男たちが振り回されるのが不憫(苦笑)

クライマックスのジャズ喫茶での告白場面は、巧みなカメラワークも相まって、可哀想なんだけどひっくり返って笑ってしまった。

川口浩って市川崑の『おとうと』は別として上手い役者さんとは思わないけど、とっぽい兄ちゃん役が見事に様になっている。

やり手婆の丹阿彌谷津子がいちばん引っ掻き回しただけあって印象も抜群。ちなみに丹阿彌さんは実生活ではあの怪優・金子信雄の最高殊勲夫人である。

■映画 DATA==========================
監督:増村保造
脚本:白坂依志夫
製作:武田一義
音楽:塚原晢夫
撮影:村井博
公開:1959年2月10日(日)
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