虎舞羅ーコブラー

劇場版 空の境界/第三章 痛覚残留の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

4.7
Fateシリーズを生み出したTYPE-MOON原作、ufotableアニメーション制作の劇場版シリーズ三作目。

・あらすじ
1998年7月、四肢をねじ切られた変死体が複数発見されるという、人に為せるとは思えないような猟奇殺人事件が発生する。そんな時、工房「伽藍の堂」の所長の蒼崎橙子に一件の依頼が舞い込む。
依頼は今回の事件の犯人の保護、又は殺害。犯人は女子高生の浅上藤乃。被害者の少年たちに陵辱されていた少女だったのだ。彼女を止める為、両儀式は行動を開始する…。

・レビュー
「空の境界」シリーズでも特に人気の高いエピソード、痛覚残留。
私も現時点ではこの章が一番好みです。危険な死生観や、痛みを知らぬ故の藤乃の狂気、そして彼女がただ触れたかった温かい優しさ。その全てが私の心に突き刺さりましたね…。

今回はオープニングから藤乃への生々しいシーンで開幕し、そして主人公の幹也の優しさに藤乃が触れる場面から始まっていきます。そして展開されるゴア描写。年齢制限無しとは言え、かなりのインパクトを残していました…。
何と言っても幹也のお人好しさが輝いていた回でしたね。幹也は誰にでも優しく好かれているのですが、その反面「お人好しが過ぎる」と評価されてしまう事も。それは前二作から言われ続けていましたが、今回はそれが明るく温かい展開へと繋がっていく糧となっています。痛みを感じない藤乃と、誰にでも優しい幹也。温かい優しさに触れられなかった藤乃は、殺戮へと魔眼の暴走の舵を切る自分の中で幹也を思い出し、葛藤していくのです。
勿論全員のキャラ立ちも大満足。ヘビースモーカーでどこか妖美な蒼崎橙子の深い台詞、そして男勝りな両儀式の強さと美しさ。ラストの式の笑顔に、日常での疲れが癒えた気がして。心の底から笑っている式を見ると、私も一緒に笑いたいなと感じたり。そんなこんなで、私も頑張ろうと思った一日でしたね。


幼き頃から失った痛覚。それと共に、生物であるという感覚も薄れゆく。
そんな中、初めて味わった痛み。
痛い、痛い、痛い――。
身体は悲鳴を上げると共に、その痛みは精神をも蝕んでいく。
もっと痛みを、私を痛めつけた者たちに、もっと痛みを――。
そこから始まった復讐は、やがて無差別な殺戮へと化す。しかしそれを、万物の死の監視者は逃しはしない。
痛みを求めるが故、狂気に走る少女。しかし彼女には、ある少年の優しき温もりが忘れらずにいた。
痛い時は痛いって、はっきり言ってもいいんだよ。
その優しさを思い出した彼女は、もう一度触れたいと願った。身体の痛覚は消えても、心の痛覚は決して消えはしない。
痛覚残留―
身体は無痛と化しても、なお精神の痛覚は残留し続ける。
「空の境界 第三章 痛覚残留」
それは、残留し続ける痛覚を癒やす比類なき優しさを求めた、ある少女の物語――