このシリーズはジャケットが怖くて避けていたけれど(あの樽は血だと思ってた)、複雑なドラマだった。
いくらなんでも金田一が山道ですれ違った老婆に違和感を持たなかったというのは無理があるし、リカも大胆すぎるけど、細かいことはさておき、昭和の役者たちが良かった。
私はこんな役の若山富三郎を初めて見たので、最初だけイメージとのギャップに驚いたが、嘘みたいにぴったり。石坂浩二との呼吸も合ってた。特に、亀の湯で二人が久々に出会うシーン。どうやらこの再会には名状しがたい背景や想いがあるようで、それは語られないのだけど、だからこそ、セリフ(説明)がなくても観客には伝わるのだ!いう制作陣の自信を感じた。音楽も良い。勇気ある感慨深い演出だと思う。
あと、磯川警部が洋服を着たまま温泉に転落しちゃって着物に着替えるシーン。ストーリーには関係ないからサービス?と思える流石の着こなしで、当時40代とは信じられない貫禄。
その他にも、常田富士男は「まんが日本昔ばなし」が大好きなので声で分かったが、味わい深い演技。三木のり平と大滝秀治は、どんなに短いシーンでも、どんなに短いセリフでも、どんなに端に居ても、本当におもしろくてキレキレで、映っているだけで嬉しくなる。
最後に。全貌が分かると、あの放庵が亀の湯に20年以上も1日おきに通っていたなんてホラー。酷い目に遭わせた元妻が戻ってくるという自分勝手な妄想も、可愛いなんて上から目線でほざくのもホラー。だから、この村の雰囲気や時代、リカ達が追い詰められた世界観を表すには、やはりこのジャケットが合っていると思う。