櫻イミト

笛吹き男の櫻イミトのレビュー・感想・評価

笛吹き男(1985年製作の映画)
4.0
“チェコ・ストップモーションアニメ最後の巨匠”と呼ばれるイジー・バルタ監督が五年の歳月をかけて完成した代表作。「ハーメルンの笛吹き男」の新解釈。

とある鉛色の街では貨幣が大量に製造され経済生活が活発化していた。そこにネズミが大量発生。困った人々は笛の音でネズミを誘導する謎の男を雇うのだが。。。

ドイツの伝承をドイツ表現主義的な映像で描いている。パースの歪んだ町の中で荒々しい木彫りの球体関節人形がうごめく。街のダークな雰囲気はティム・バートン監督版「バットマン」(1989)のゴッサム・シティを彷彿とさせる。

本作の笛吹男はマント姿でカッコよくヒーロー然として登場する。その正体はおそらく天使だろう。今まで観てきたイジー・バルタ監督作品から宗教的示唆は感じなかったが、本作は一種の黙示録として描かれていた。

バルタ監督の作品は全て好みで最新作も観たいのだが、日本ではマイナーなのか観る機会がない。師匠にあたるヤン・シュヴァンクマイエル監督作よりも、バルタ監督作のほうが退廃とフェティッシュなこだわりが強くて個人的には好みだ。
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