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ショーシャンクの空にのYYamadaのレビュー・感想・評価

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
4.5
【ヒューマンドラマのススメ】
 ~映画を通じて人生を学ぶ

◆作品名:
ショーシャンクの空に (1994)
◆主人公のポジション
冤罪で服役する囚人
◆該当する人間感情
 絶望、服従、希望、誇り

〈本作の粗筋〉 allcinemaより抜粋
・妻とその愛人を射殺したかどでショーシャンク刑務所送りとなった銀行家アンディ。初めは戸惑っていたが、やがて彼は自ら持つ不思議な魅力ですさんだ受刑者達の心を掴んでゆく。
・そして20年の歳月が流れた時、彼は冤罪を晴らす重要な証拠をつかむのだが…。

〈見処〉
①誰にも奪えない希望を胸に、
彼が飛びたつとき、奇跡と感動が起こる!
・『ショーシャンクの空に』(原題: The Shawshank Redemption)は、1994年に製作されたヒューマン・ドラマ映画。
・冤罪によって投獄された有能な銀行員が、腐敗した刑務所の中でも希望を捨てず生き抜く姿を描いた本作は、1982年に刊行されたスティーヴン・キングの中編小説「刑務所のリタ・ヘイワース」を、脚本家のフランク・ダラボンが初監督作品として映像化したもの。
・『シャイニング』のキューブリック監督を酷評するなど、自身の小説の映画品質に辛辣なスティーヴン・キングをもって「本作は『スタンド・バイ・ミー』と並んで自作映画化で最も好きな作品」と云わしめたダラボンは、その後『グリーンマイル 』(1999)と『ミスト』(2007)にて、キング原作小説の映画化作品で、メガホンを取っている。
・主人公の銀行員アンディをティム・ロビンス、囚人仲間の調達屋レッドをモーガン・フリーマン、悪徳な刑務所長サミュエル・ノートンをボブ・ガントンが演じ、他にウィリアム・サドラー、クランシー・ブラウン、ギル・ベローズ、ジェームズ・ホイットモアらが脇役として出演。
・本作公開当時は、ロビンスとフリーマンの演技が高い評価を受けながら、興行収入は製作費25百万ドルに満たない16百万ドルと興行的に惨敗。しかしながら、アカデミーノミネートを受けた劇場再公開や、海外収益で最終的な興行収入は5,830万ドルに達した。
・さらに本作鑑賞者の口コミにより、公開翌年の1995年に「最もレンタルされた映画作品」となり、1997年から定期的にテレビ放映されるようになると、その人気はさらに高まり、。現在では映画史に残る傑作の一つとして認識されている作品である。

②「激戦!」1994年度のアカデミー賞
・1995年3月に授賞式が行われた「第67回アカデミー賞」の作品賞ノミネート作品は、以下のとおり。
❶フォレスト・ガンプ/一期一会
❷フォー・ウェディング
❸パルプ・フィクション
❹クイズ・ショウ
❺ショーシャンクの空に
・当時の批評家の下馬評は、13部門にノミネートされた❶、カンヌ国際映画祭の最高賞「パルム・ドール」を獲得していた❸の一騎討ち。最終的には、本命の❶が作品賞を戴冠している。
・本作は、アカデミー作品賞・主演男優賞(モーガン・フリーマン)・脚色賞(フランク・ダラボン)・撮影賞(ロジャー・ディーキンス)・編集賞・録音賞・作曲賞と7部門にノミネートされ、結局は無冠に終わった。
・映画史に残る❶❸❺にて競われた1994年度のアカデミー賞。貴方は、どの作品に投票しますか?

③名作にはトリビアがいっぱい
・ダラボンとスティーヴン・キングの関係は、1983年にキングが新人監督が履歴書を作成できるように、自身の短編小説「312号室の女」の映画化権を1ドルで与えたことが始まり(ダラーディール)。
・1987年にダラボンはキングに掛け合い、わずか5,000ドルにて96ページの本作原作小説『刑務所のリタ・ヘイワース』の映画化権を購入。キングはダラボンからの小切手を換金せず「もし保釈金が必要になったときのために。愛をこめて、スティーブン」と額に入れて返却した。
・本作は1947年から1966年の出来事が描かれているが、時間の経過を台詞で表現する演出は『グッドフェローズ』(1990)を参考にした。
・ダラボンは本作のインスピレーションの源として『スミス都へ行く』や『素晴らしき哉、人生!』のフランク・キャプラ監督作品を挙げ、刑務所映画というより、ほら話(tall tale)として作品構成を図った。
・当時、刑務所が舞台の映画で高い興行成績は望めないと考えられていたが、本作製作会社のキャッスル・ロック・エンターテインメントの共同設立者で、キング原作の『スタンド・バイ・ミー』監督のロブ・ライナーの後押しを受けて、本作製作が決まった。ライナーは、アンディ役にトム・クルーズ、レッド役にハリソン・フォードを起用する計画を立てていた。
・ダラボンは、ロブ・ライナーに映画化権利を引き渡さないために2500万ドルの予算を自ら調達した。
・ダラボンは、アンディ役にトム・ハンクスやトム・クルーズ、ケビン・コスナー、トム・ハンクスが候補に上がり、クルーズは脚本の読み合わせに参加したが、経験の浅いダラボンの下で働くことを危惧し、辞退した。
・当時は中堅クラスの撮影監督ロジャー・ディーキンスを使うようにダラボンに要求したのは、アンディ役のティム・ロビンス。ディーキンズは刑務所の閉鎖的な感じを出すため、外部を見せないようにし、ラストシーンで、より大きな効果を出すことを意図した。ディーキンスは、本作のアカデミー撮影賞に初ノミネート以降「13回無冠」が続いたが、『ブレードランナー 2049』(2017)で念願の初受賞。現代最高の撮影監督となったが、出世作は本作。
・公開前に一般向けの試写会にて高い評価を受けた本作は、ショーレースを意識し、「権威ある観客」を惹きつけたいため、広告から原作者スティーヴン・キングの名前が省かれた。
・本作は、たびたびキリスト教神秘主義に基づいていると解釈され、刑務所の屋根を修理する場面は、アンディが12人の受刑者のためにビールを手に入れる構図は「最後の晩餐」を模したものと云われているが、監督のダラボンは、これは意図した演出ではないとしている。
・ショーシャンク刑務所はメーン州に位置する架空の刑務所。映画のロケ地となったオハイオ州マンスフィールドにあるかつてのオハイオ州立教護院は、現在も一般見学出来る。

④称賛もいっぱい
・アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)主催「アメリカ映画ベスト100」: 第72位
・インターネット・ムービー・データベース(IMDb)ユーザー投票: 第1位
・エンパイア誌「史上最高の映画」
・BBCラジオ「リスナーが選ぶ史上最も好きな映画」
・Sky UK「アカデミー賞作品賞を受賞しなかった最も偉大な映画」
・全米脚本家組合「101の偉大な脚本リスト」第22位
・Film4「死ぬまでに見るべき50の映画」
・デイリー・テレグラフ「史上17番目に優れた刑務所映画」
・USAトゥデイ「史上最高の映画50本」
・ティム・ロビンス「神に誓って言うが、世界中のどこに行っても『あの映画は私の人生を変えた』と言ってくれる人たちがいる」「ネルソン・マンデラから、この映画が大好きだと言われた」
・モーガン・フリーマン「どこに行っても今まで観た映画で最高だ」と言われる」
・スティーヴン・キング「「あれが私にとって最高の映画ではないにしても、映画に関するアンケートでは上位にランクインすることを踏まえれば映画ファンたちの中ではおそらく最高の映画なんでしょう。この作品でそうしたことが起こるなんて思いもしなかった」
・スティーヴン・スピルバーグ「本作はチューインガムのような映画で、踏めば靴にくっつく」
・フランク・ダラボン「古い世代が若い世代と映画を共有することが、長く支持されることに貢献している」

⑤結び…本作の見処は?
◎: 142分の上映時間に、小さなトピックスを紡ぎ、無駄なシーンが全くない珠玉の脚本。寒暖のバランスも、(今となっては有名な)、ポスターの向こう側の描写の全てが完璧な作品。
◎: 当時の新鋭、ロジャー・ディーキンスによる本作の撮影は、いま見ても素晴らしい。特に、暗い囚人部屋の扉を開けたあとの光量の加減は、ディーキンスならでは。
◎: ティム・ロビンス、モーガン・フリーマンの二人にとって、決して越えることの出来ない「ベスト・パフォーマンス作品」

⑥本作から得られる「人生の学び」
映画とは「希望」を与えてくれる存在と知らしめてくれる作品。
・「脳と心で聴いていた。音楽は決して人から奪うことはできない」
・「選択は2つだ。必死に生きるか、必死に死ぬかだ」
・「希望はいいものだ。多分最高のものだ。素晴らしいものは決して滅びない」
・「興奮している自分がいる。スタートに立つ自由な人間だけが感じる興奮なのだろう」

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・1995年に初めて本作を鑑賞したとき、自分の本作のイメージは「ホラー小説家の原作による、マイナー俳優が主演したマイナー映画」の認識でした。
・ウイスキーのように多くの鑑賞者の称賛を受け、熟成された本作を1000本目のレビュー作品とし、本作並みに熟成された作品に再びお目にかかれることを1001本目からの目標としたいと思います。
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