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山のMOCOのレビュー・感想・評価

(1955年製作の映画)
5.0
「やったな、あと少しだ。よくがんばって登った」(ガザリー)
「もう近いぞ、反対側かも?」(クリストファー)
「何がだ?」
「事故機さ」
「事故機?・・・
ああ、例の旅客機か?そうだったな、忘れてた」
「何のために危険を冒したと思ってるんだ」
「山を登ることしか考えていなかった・・・」

 名優スペンサー・トレーシーの名作。
 人は他人(ひと)のために生きているということ、人の道から外れたことをしてはいけないことを説く教育映画のようなお話です。

 10才にも満たない頃にテレビで何回か観ました。
 現在とは違って子供の頃は地上波しかなく2時間枠での映画の放送はほとんど記憶に有りません。記憶にある有名な映画では、荒野の七人、大脱走、忠臣蔵位ですが、2時間を超える大脱走、忠臣蔵は前・後編に別れて2週に分けての放送でした。
 この映画と「汚れなき悪戯」は何故か強烈な印象が残っている映画です。一般家庭にビデオデッキの普及する20年以上前の話ですから道徳心を養うようなこんな映画の放送が多かったのか、こんな映画だから親が観せてくれたのか・・・。

 スイス、アルプスの山頂にインドの旅客機が墜落し、山岳ガイドのガザリー(スペンサー・トレーイシー)に救助の打診があるのですが、山登りを離れて何年も経つ上、過酷な冬の登頂のため断るのですが歳の離れた弟クリストファー(ロバート・ワグナー)が現場に向かうと言い出します。   
 クリストファーは犠牲者の金品を奪うことが目的のためガザリーは一旦は登山を断るのですが、経験の少ない弟を単独で登らせることはできないため結局二人での登山がはじまります。

 ガザリーは弟と登山できることに喜びがあり、数々の難所を乗り越え機体の残骸を発見します。
 機体の中に若い娘の生存者を発見し救助の準備を始めるザカリーにクリストファーは「そんなことをしたら、俺たちが来たことがばれちまうじゃないか」と言い放ち娘の首を絞めようとさえします・・・。

 翌朝ザカリーは機体のドアをタンカー代わりにして女性を乗せ、クリストファーを残し下山を始めるのですが・・・。

 下山途中「やめろと言った」雪橋を渡りクリストファーはクレパスに落ちて死亡します。

 下山したガザリーが、聞き取りにきた救助員に「俺は金品が目当てだった。弟は救助のために山にのぼった!彼女を救ったのは弟だ!早く書け!(メモを取れ)」と怒鳴るシーンと周りの反応に、子供ながら感動しました。
 聞き取りを終え自宅に帰るガザリーに牧師が言います。
「君はウソをつかん男だった、日曜日に教会へ来なさい」


 レンタルビデオで共演がロバート・ワグナーと知ったのは後々のことでした。

 スタジオに大がかりなセットを組んでの撮影はある意味高尚な演劇を観ているようで旧き良き時代の映画作りを偲ばせます。
 手袋なしの登山?
 なだらかな下山ルートからなぜ登らないのか?
 人格の描きかたが極端すぎるのではないだろうか?
・・・など疑問が残る映画ですがスペンサートレーシー演じる正義感溢れる純朴で優しい登山家に惹かれる素敵な映画です。

 子供の頃観た「汚れなき悪戯」と、この映画との出逢いが私を映画好きにしてくれました。
・・・と言う訳で思い入れだけで5.0、古の映画は本当に良い。
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