MOCO

サウンド・オブ・サンダーのMOCOのレビュー・感想・評価

サウンド・オブ・サンダー(2004年製作の映画)
3.5
「過去の変化は波紋の輪が広がるように段階を経てやって来る。
 どんどん大きくなった波はまたやって来て、6500万年の進化の波が現代に押し寄せる。
 天候の次は原始的な植物が変化し複雑な生物へと続き、最後は進化の最後に登場したホモサピエンスの進化の波。
 人間は海の生物に進化しているかも?絶滅の可能性もあるかも?・・・。
 最後の波までもういくつもない・・・」


 ライオンなど自然界の動物はウィルスの流行もあり全て絶滅し、DNAの復元もできなくなってしまった2055年、タイムトラベルが実現しチャールズ・ハットンのタイムサファリ社は富裕層に6500万年前の世界での恐竜狩りツアーを提供します。
 このツアーは直後に火山の爆発で死ぬことが決まっている一頭の恐竜を銃で撃つ体験ツアーで
 規則1「過去にはどんな些細な変化も起こしてはならない」
 規則2「過去に何も残さない」
 規則3「過去から何も持ち去らない」
と、いう規定から宇宙服のようなスーツを着用し、訪れる世界の空間に特殊な通路を築き地面との接触を防ぎ、凍った液体窒素を弾丸に使用する特殊な銃が使われ、添乗するスタッフに厳重に管理されていました。

 科学者 トラヴィス・ライヤーは添乗しツアーを仕切っていたのですがスタッフの点検ミスから液体窒素銃がトラブルを起こしてしまいます。
 トラヴィスの銃の発砲をきっかけに、全ての銃のロックスイッチが解除されるため全ての銃が機能を失いツアー客は恐竜の視覚から退避させられ、現場で修理された銃でなんとか恐竜を射殺しツアー客は戻ってきます。
 その翌日から天候異変が起き始め、次のツアーでは何故か火山の爆発寸前に到着時間が変わってしまいツアー客が再び命を落としかねない事態が発生してしまい、トラヴィス達は原因と対策のためのタイムトラベルを主張するのですが、政府は直ちにタイムサファリ社の閉鎖を決定します。

 トラヴィスはタイムトラベルの生みの親でありながら解雇されている女性のソニア・ランド博士を訪ね助言を求めるのですが、その時大きな時間の波が世界を襲いトラヴィスとソニアは大量の見たことの無い昆虫に襲われ街中が大きな木々に覆われ多くのビルが崩壊します。
 ソニアは6500万年に取り返しのつかない何かを起こしてしまったことで、最後は人類まで変化すると言い出します。
 
 ソニアとトラヴィスのチームは異変の原因を解明するために調査を開始し、銃の故障したツアー記録から帰還の際に1.3グラム質量が増加していたことが発覚します。
 トラブルの起きた時間以前にタイムトラベルで現場に行き原因を取り除く必要があるのですが、会社は閉鎖された上に変化した歴史の中でシステムの多くが水没しているのです。

 トラヴィス達はすっかり変わってしまった街並みの中で、未知の変化を遂げた動物達に襲われながらツアー客を探しだします。
 1.3グラム質量の増加は恐竜に襲われないように退避したツアー客が一羽の蝶を踏みつけてしまい、死骸を靴底で運んでしまったために発生していたのです。
 踏みつけられた蝶に受粉され実を着けるはずだった花が受粉しなかったことや生まれるはずだった子孫がうまれてこなかった・・・6500万年前の些細な変化は蝶が死んでしまった世界に戻すために6500万年後の世界を修正しようと大きな波が押し寄せることになりソニア博士の説によればやがて人類も変化に巻き込まれるのです。

 トラヴィス達は会社のコンピューターを持ち出し、最終目的地であるソニアが初期にタイムトラベルの研究をしていた大学に向かいコンピューターを接続をするのですがその道程でメンバーは次々命をおとしていきます。

 事の発端は営利目的に走った会社のトップ、チャールズ・ハットンが帰還者に施すべきチェック機能に経費がかかりすぎると無断で停止していた(とは言え往復の質量係数をチェックするのは多額の経費がかかるとは思えない)ことにあるのですが、仮にトラヴィスがツアー現場にタイムトラベルをして蝶を助けて世界を元に戻したとすると今回の事件は誰も知ることがなくチャールズ・ハットンはいずれ同じ過ちを起こすことになるのです。
 解決策もないままトラヴィスはタイムマシンに入り込み、唯一生き残っていたソニアがタイムマシンを稼働させようとした時ホモサピエンスの進化に関わる最後の波が・・・。


 会社のタイムトラベルが行われる部屋の扉はこの世と隔絶された世界観が表現されているのですが、1994年のヴァン・ダムの『タイムコップ』を模写したような扉のために古くさい印象をうけてしまうのですが、調べてみたら同一監督の作品なので「タイムトラベルの機械は相当な力が外部にかかる」という監督のイメージなのでしょうね。
 
 6500万年後の世界にトラヴィス達が存在して同じ会社に在籍しているのか?作品上タイムトラベル映画にありがちな矛盾はどうしてもあるのですが「最後は進化の最後に登場したホモサピエンスの進化の波・・・」という言葉で辻褄をあわせていると思えばストーリー展開にストレスを感じるほどのものではありません。
 スタジオロケの歩行シーンは足踏み状態にバックのシーンが流れていく一昔前の稚拙な演出がされており「今さら何故?」と思ってしまう他、未来社会の自動車はむしろ退化したようなデザインと運転手付きのタクシーが存続している状況です。
 現代に存在しない別の進化を遂げた生物に迫力がないことが今一つ映画の迫力を削ぎ残念なのですが『華氏451度』『何かが道をやってくる』『ウは宇宙船のウ』『スは宇宙(スペース)のス』のレイ・ブラッドベリの原作(『雷のような音』)だけあって、大きな空気のような波が全世界に巻き起こる発想は面白いものがありタイムトラベルの映画を楽しむことができます。
MOCO

MOCO