櫻イミト

秘密の子供の櫻イミトのレビュー・感想・評価

秘密の子供(1979年製作の映画)
3.5
ガレル監督が、同年に離婚した元ヴェルベット・アンダーグラウンドのニコとの思い出を描いたとされる一本。主演はアンヌ・ヴィアゼムスキー(当時32歳)と「たぶん悪魔が」(1976)で友人の生態学者を演じたアンリ・ドゥ・モブラン。”秘密の子供”とはニコとアラン・ドロンの隠し子を指す。

映画監督バチストは薬物を欠かせなかった。やがて出会ったエリーと恋に落ちる。彼女には大物俳優との隠し子スワンがいた。薬物中毒治療のショック療法を受けるバチスト。エリーの支えで凌いでいたが、今度は彼女が薬物に手を出す。。。

ヴェルベット・アンダーグラウンド&ニコが大好きなので興味を持って鑑賞。

「あなたの心はカメラなの」。ATG映画を思わせるような、自主映画っぽさを強く押し出した始終センチメンタルな一本だった。アンヌ・ヴィアゼムスキーにニコを演じさせるのは立ち位置的に共通点があり面白いアイディア。

クリエイティブ系男女の出会いから破綻直前までを、日常を切り取るように取り留めなく重ねていく。アンヌが魅力的に撮られていて、映像もレトロな質感を上手く醸し出し最後まで楽しむことが出来た。ただしニコを知らない人の場合は印象が違うかもしれない。

離婚直後で存命中の妻との思い出を感傷的な映画にする感覚はお国柄の違いだろうか?題名に「秘密の子供」と付けるのもぶっ飛んだ行為に思える。決して感情任せに作っているのではなく、カット変わりに8ミリフィルム端の露光を思わせる特殊効果を施してノスタルジーな雰囲気をしっかりと演出している。「あざとすぎる!」と言いたくなるが、ゴダール監督が「ガレルは息をするように映画を撮る」と語ったそうなので、これが自然な流儀なのだろう。

二人とスワン君で映画館にチャップリンの「キッド」(1921)を観に行くシーンがある。同作の映像引用はされないが、帰り道で劇伴を引用した再現オマージュがある。キッドとスワン君がそっくりに見えた。
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