昔、映画館で母とこの映画を見た。
いつも家族が見たいという映画を見ていた母が、珍しくどうしてもこの映画が観たい、と言っていたのを思い出す。理由は地元の新聞の評価だった。辛口の評価が連なる中で珍しく、この映画はすごく高評価だったからだという。
私はまだ幼く、ちょうど主人公と同じくらいの歳だった。
自分にもし病気の家族がいて、死んでしまったら…そう思うと最後の方感情移入して泣いたのは覚えているが、正直なところ、そんなに高評価?と思ったのを覚えている。
映画館を出た時、母は1人だけ泣きはらした顔をしていた。
「そんなに泣く映画だった?」と聞く私に、言葉にならない表情で「うん」と答えていた。
それから私の中でこの作品はなんとなくずっと避けてきたものだった。私には理解できないけど、母はお気に入りの映画、という感じで、全てを知っているはずの母親に理解できないところがあるのが嫌だったのかもしれない。
時が経って(調べるともう11年経っていた)私もそこそこ大人になり、突然この映画を久々に見てみようと思った。
とある韓国ドラマを見ていて、家族への臓器提供の話があり、どれだけの負担があるのか?と知りたくなった時この作品が浮かんだ。
もちろんここには書かないけれど、最終的なネタバレ?はしっかり覚えていた。
最後が分かっていて楽しめるのかな?とも思った。
答えは超YES。
大号泣し、お気に入りの作品の一つになった。
この作品をお気に入り、とか、楽しい、っていうのは少し違うかも。
だけどこの作品に泣ける自分がいる。
それは11年を生きてきて、ちゃんと愛を知ったからなのだと思う。
自分の生きた証を確かめながら映画を見て、嘘にまみれた自分の人生が悲しくなった。
これが本当に正しい生き方なのか、自分が大切なものは何なのか分かっているのに背いて生きている、と思った。
なんだか映画のレビューではなくなってしまったけど、母があの時何を思ってあんなに泣いたのか、今なら聞かなくても分かる気がした。