Sari

預言者のSariのレビュー・感想・評価

預言者(2009年製作の映画)
3.7
マフィアが支配する刑務所へと送られたアラブ系の青年が、壮絶なサバイバルを経て自身のファミリーを形成する姿を活写するフィルム・ノワール。

19歳の無学で身寄りもないアラブ系フランス人マリク(タハール・ラヒム)は 傷害罪で入所。6年の刑に服して中央刑務所に送られる。そこでは様々な勢力が互いに牽制し合いながらも、弱肉強食の世界を築いていた。
そんな民族と宗教の間で途方に暮れるしかないマリク。身寄りもなく、仲間さえも居ない孤独な彼に、マフィアのボス、セザール(ニエル・アレストリュプ『戦火の馬』)は、保護と引き換えに受刑中の証人殺害を命じる。優雅で神秘的な存在の証人レイェブを殺してから、マリクに不可解な予兆が出現し始める。

犯罪から社会を描くフィルム・ノワールは伝統的な映画ジャンルだが、鳥肌立つ男前の美学と繊細な描写で綴った鮮烈な巨編だ。
カンヌ国際映画祭でグランプリをはじめ、数々の映画賞に輝いた。主演は、本作で本格的に俳優デビューを飾り、セザール賞初となる主演男優賞と新人賞のダブル受賞という栄誉をつかんだ新星タハール・ラヒム。
殺伐とした刑務所の生活をドキュメントのように説明を廃し重く淡々と活写。殺害シーンは容赦ない。最小限の説明をキー人物の名や、年数の数字を画面に提示、テンポアップし一人の若者のリアルな性の描写なども描かれ、効果的な音楽(ロック)の強弱が効いている。
Sari

Sari