フォードのハリー・ケリー主役のサイレント映画。
フォードは世界一の馬の使い手だ。馬の疾走、急勾配を駆け下りる、躍動感溢れる危険なショットはフォードしか撮れない。崖下を疾走する馬車と襲撃する強盗団の並走の俯瞰ショットが素晴らしい。崖から馬車が落下して崖下で大破する、そこへ空馬が走り込んでくるショットも驚嘆した。
馬が人間の如く大活躍する作品だ。ハリーは馬に乗ったままホテルのロビーに乗り込み、さらに階段を上がってデューク・R・リーの部屋に馬ごと乗り込んでしまう。驚くリー、ベッドの藁を食べてしまう馬、「相部屋にしてくれ」とハリーが頼むがリーは窓から落下して逃げ出す。怒り狂ったリーが今度は銃を抜いて部屋に乗り込む、ハリーが窓から逃げ出す、と繰り返していく。このくだりは秀抜だ。
ハリーとリーは音痴だが歌が好きだ。サイレント映画のこの逆説が面白い。
高い崖の間を馬で抜けたり、ハリーがロープで崖をよじ登ったりする。
クライマックスは砂漠だ。二人が砂漠を歩いて帰れるかを競う。砂嵐がくる。ここで凄いのは馬を倒して布で覆って砂嵐に耐えるのだ。馬を鮮やかに倒すのには驚いた。ハリーは生き抜き、ジョー・ハリスは砂に埋れる。
原題は「Hell Bent 猪突猛進」
